難病Update

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B細胞性悪性疾患CAR-T細胞療法in vivo CAR-T

2024.10.29

マルチドメイン融合リガンドを有するレンチウイルスベクターを用いた、非ヒト霊長類におけるCAR T細胞のin vivo生成

In vivo CAR T-cell generation in nonhuman primates using lentiviral vectors displaying a multidomain fusion ligand

Christopher J. Nicolai*, Maura H. Parker*, Jim Qin*, Weiliang Tang*, Justin T. Ulrich-Lewis*, Rebecca J. Gottschalk*, Sara E. Cooper*, Susana A. Hernandez Lopez*, Don Parrilla*, Richard S. Mangio*, Nolan G. Ericson*, Alissa H. Brandes*, Saluwa Umuhoza*, Kathryn R. Michels*, Mollie M. McDonnell*, Lisa Y. Park*, Seungjin Shin*, Wai-Hang Leung*, Andrew M. Scharenberg*, Hans-Peter Kiem, Ryan P. Larson*, Laurie O. Beitz*, Byoung Y. Ryu*

 

* Umoja Biopharma, Seattle, WA.

 

Blood. 2024 Aug 29;144(9):977-987. doi: 10.1182/blood.2024024523.

 

キメラ抗原受容体(CART細胞療法は、B細胞性悪性疾患の治療において革新的な有効性を示した。しかし、その広範な使用を妨げている阻害要因として、高価であること、また製造工程が複雑であることなどが挙げられる。こうした阻害要因を克服するために、われわれは新規プラットフォームVivoVecを開発した。これはin vivoCAR T細胞を生成できるレンチウイルスベクターである。

 

本稿では、T細胞活性化および共刺激シグナルのマルチドメイン融合タンパクのかたちでのVivoVec粒子(VVP)表面への組み込みを報告し、また、これによりin vivoでのベクター導入効率が上昇しCAR T細胞の抗腫瘍効果が改善したことを示す。さらに、リンパ球除去のための化学療法を行わない状況で、非ヒト霊長類へのVVPの投与は抗CD20 CAR T細胞の安定した生成、そして、10週間以上にわたるB細胞の完全な除去をもたらした。

 

これらの結果により、トランスレーショナルリサーチのための適切な動物モデルにおいての本プラットフォームの有効性が示された。そしてまた、本結果はここで述べた方法の臨床開発への応用を支持するものであり、CAR T細胞療法の領域におけるパラダイムシフトがもたらされると期待される。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38861668/

コメント

CAR-T細胞療法は、B細胞性悪性疾患に対しての革新的な治療法となった。しかしながら、もちろん、解決すべき問題点もある。その大きなもののひとつは、適正なCAR-T細胞を作成するために必要な複雑なプロセスと時間である。つまり、患者から大量のリンパ球を採取し、それを細胞調整施設へ輸送して、そこで一定期間をかけて、CAR遺伝子のTリンパ球への導入、CAR-T細胞の培養・増幅などの操作を行う。このプロセスに一般的に数週間が必要である。本論文においては、これを解決するための方法として、CAR遺伝子を患者に投与し体内(in vivo)でCAR-T細胞を作成する試み、つまりin vivo CAR-T細胞療法確立のための研究成果が述べられている。

 

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生

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