2024.11.26
mRNAワクチン接種後SARS-CoV-2特異的形質細胞は骨髄中の長寿命形質細胞分画で持続的に検出されない
SARS-CoV-2-specific plasma cells are not durably established in the bone marrow long-lived compartment after mRNA vaccination
Doan C. Nguyen*, Ian T. Hentenaar* Andrea Morrison-Porter* David Solano* Natalie S. Haddad*, Carlos Castrillon, Martin C. Runnstrom*, Pedro A. Lamothe*, Joel Andrews, Danielle Roberts, Sagar Lonial, Ignacio Sanz, F. Eun-Hyung Lee
* Division of Pulmonary, Allergy, Critical Care, and Sleep Medicine, Department of Medicine, Emory University, Atlanta, GA, USA.
Nat Med. 2024 Sep 27. doi: 10.1038/s41591-024-03278-y. Online ahead of print.
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するmRNAワクチンは、重症疾患に至るのを防ぐ上で効果的であるが、SARS-CoV-2特異的形質細胞が骨髄に認められたとしても、防護作用を有する抗体は急速に減弱する。本研究では、この逆説的な現象を探究するため、SARS-CoV-2 mRNAワクチンの接種後2.5 - 33ヵ月の健康成人19例を登録し、骨髄中の長寿命形質細胞(LLPC)および非LLPCにおいて、インフルエンザ、破傷風、またはSARS-CoV-2に特異的な抗体分泌細胞(ASC)を測定した。LLPCではインフルエンザおよび破傷風特異的ASCは容易に検出されたが、SARS-CoV-2特異的ASCはほとんど認められなかった。インフルエンザ、破傷風およびSARS-CoV-2特異的ASCのLLPCに対する非LLPCにおける存在比は、それぞれ0.61、0.44および29.07であった。PCRで確認された最近の感染歴とワクチン接種歴を有する患者5例では、LLPCにおいてSARS-CoV-2特異的ASCはほとんど認められなかった。骨髄ASCの培養上清における分泌抗体の測定でも、同様の結果が得られた。インフルエンザおよび破傷風に対する血清IgG抗体価はIgG分泌LLPCと相関した一方、SARS-CoV-2に対する血清IgG抗体価はIgG分泌非LLPCと相関しており、ワクチン接種後3 - 6ヵ月後に減弱した。まとめると、本研究では、血清SARS-CoV-2特異的抗体の急速な減弱は、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の骨髄LLPCに同抗体が認められないことで説明し得ることが示唆される。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39333316/
コメント
SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後一時的にSARS-CoV-2特異的抗体が誘導されるもその後3 - 6ヵ月で低下しそれとともに感染予防効果が減弱することが知られている。幅広い細菌やウイルスに対する多くのワクチンが実用化されているがワクチン効果の持続期間、必要投与回数などにはワクチンの種類によって違いがある。その違いがどこから来るのか非常に興味深いテーマであるが未だ十分には明らかになっていないと思われる。本研究ではインフルエンザ、破傷風と比較する事で骨髄中の長寿命形質細胞(LLPC)の量と抗体価の持続期間とに正の相関があること、SARS-CoV-2に対するLLPCは持続的に乏しいことを示した。LLPCが誘導できる場合と出来ない場合の違いについて考察されているがまだ考察の域を出ておらず今後の課題として残っている。また今回の研究は骨髄検体を用いるということもあり19例と言う少数例である事とサンプリングのタイミングを任意に設定できないといういうこともあり解析結果の解釈を難しくしている。今度の研究の進展を期待したい。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄附講座 招へい教授 坪井 昭博先生