2024.12.25
筋ジストロフィー患者および筋強直性ジストロフィー患者におけるがんリスク 登録に基づくコホート研究
Cancer Risk in Patients With Muscular Dystrophy and Myotonic Dystrophy A Register-Based Cohort Study
*From the Department of Molecular Medicine and Surgery, Center for Molecular Medicine (C.M.G., G.T., F.T., A.S.N., A.N.), Unit of Epidemiology, Institute of Environmental Medicine (G.T.), and Department of Women's and Children's Health (T.S.), Karolinska Institutet; Department of Clinical Genetics and Genomics (F.T., A.N.), Department of Radiology (A.S.N.), and Department of Child Neurology, Astrid Lindgren Children's Hospital (T.S.), Karolinska University Hospital, Stockholm; Department of Clinical Genetics and Genomics (A.N.), Sahlgrenska University Hospital, Gothenburg; and Institute of Biomedicine, Department of Laboratory Medicine (A.N.), University of Gothenburg, Sweden.
Neurology. 2024 Oct 22;103(8):e209883. doi: 10.1212/WNL.0000000000209883. Epub 2024 Sep 19.
スウェーデンの全国登録のデータを用いて、筋ジストロフィー患者および筋強直性ジストロフィー患者のがん全体のリスクと、がんリスクの範囲を明らかにすることを目的とした。1950 - 2017年にスウェーデンで出生した筋ジストロフィーまたは筋強直性ジストロフィーの患者全例と、性、出生年、出生県でマッチさせた対照者(患者1例につき50例)を対象に、マッチングコホート研究を行った。がん全体および特定の悪性腫瘍との関連を、層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定した。
筋ジストロフィー患者2,355例、筋強直性ジストロフィー患者1,968例を特定した。筋ジストロフィーでは、小児期の星状細胞腫およびその他の神経膠腫(ハザード比[HR]8.70、95%CI 3.57 - 21.20)、ならびに成人期の甲状腺以外の内分泌癌(HR 2.35、95%CI 1.03 - 5.34)および膵臓癌(HR 4.33、95%CI 1.55 -12.11)のリスク上昇が認められた。筋強直性ジストロフィーでは、小児の脳腫瘍のリスク上昇(HR 3.23、95%CI 1.16 - 9.01)、成人のがん全体のリスク上昇(HR 2.26、95%CI 1.92 - 2.66)、特に脳腫瘍(HR 10.44、95%CI 7.30 - 14.95)、甲状腺癌(HR 3.92、95%CI 1.70 - 9.03)、甲状腺以外の内分泌癌(HR 7.49、95%CI 4.47 - 12.56)、子宮体癌(HR 8.32、95%CI 4.22 - 16.40)、卵巣癌(HR 4.00、95%CI 1.60 - 10.01)、黒色腫以外の皮膚癌(HR 3.27、95%CI 1.32 - 8.13)のリスク上昇が認められた。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39298705/
コメント
スウェーデンの全国登録のデータを用いた、筋ジストロフィーに関する大規模なマッチングコホート研究である。考察で著者らが指摘するように、筋ジストロフィーにおける小児期の中枢神経系(CNS)腫瘍ならびに成人の甲状腺以外の内分泌癌および膵臓癌のリスク上昇に関して、今回初めて報告された。さらに、筋強直性ジストロフィーにおいても、これまで報告されていなかった甲状腺以外の内分泌癌のリスク上昇が明らかにされた。神経筋疾患に集中して日ごろの診療を行う脳神経内科医にとって、がん発見を見落とさないための、有用な報告と考えられ取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生