難病Update

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アミロイドアルツハイマー病タウ軽度認知症軽度認知障害

2025.02.28

血液バイオマーカーと短期および長期の軽度認知障害発症リスク

Blood-Based Biomarkers and Risk of Onset of Mild Cognitive Impairment Over the Short and Long Term

Anja Soldan*, Corinne Pettigrew*, Jiangxia Wang, Marilyn S Albert*, Kaj Blennow, Tobias Bittner, Abhay Moghekar*

*Department of Neurology, The Johns Hopkins University School of Medicine, Baltimore, MD.

Neurology. 2025 Jan 28;104(2):e210225. doi: 10.1212/WNL.0000000000210225. Epub 2024 Dec 26.

 

本研究では、アミロイド(Aβ42/Aβ40比)、タウ(p-tau181)、神経変性(NfL)、グリア活性化と神経炎症(神経膠原線維酸性蛋白[GFAP]、YKL40、可溶型triggering receptor expressed on myeloid cells 2[sTREM2])の血液バイオマーカーについて、認知機能が正常なときに採取された値が軽度認知障害(MCI)発症までの期間と関連しているかどうかを検討した。縦断的観察研究であるBIOCARD研究に参加した認知障害のない被験者から、ベースライン評価(「ベースライン1」)時に血漿を採取した。約7年後、その時点でも認知障害のない被験者を対象に、2回目の「ベースライン」検体(採取方法は若干異なる)を評価した。Cox回帰モデルにより、バイオマーカー値とMCI症状発現までの期間との関連を2つのベースラインについてそれぞれ検討した。

「ベースライン1」には271例(平均年齢=57.5歳、女性60.5%、MCI/認知症への進行例82例)、「ベースライン2」には202例(平均年齢=64.5歳、女性62.4%、進行例31例)が組み入れられた。平均臨床追跡期間は、「ベースライン1」が15.5年、「ベースライン2」が9.9年であった。両方のベースラインで、血漿Aβ42/Aβ40比が低いこと(両方のハザード比[HR]≦0.69、95%CI≦0.55 - 0.87、P≦0.034)、GFAPが高いこと(同HR≧1.83、CI≧1.28 - 2.60、P<0.002)、p-tau181/(Aβ42/Aβ40)比が高いこと(同HR≧1.64、CI≧1.25 – 2.13、P≦0.001)がそれぞれ、MCI症状発現までの期間が短いことと関連していた。ベースライン2では、p-tau181が高いこと(HR=2.07、CI=1.12 – 3.83、P=0.021)、NfLが高いこと(HR=1.75、CI=0.99 - 3.10、P=0.05)も、7年以内の進行においてMCI症状発現が早いことと関連していた。

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39724536/

コメント

認知機能の何らかの低下はあるが、認知症ではない段階である軽度認知障害(MCI)は、認知症の前段階群と、正常範囲の認知機能障害で認知症へと展開せず、軽度認知機能障害で経過する群の両群を含むと考えられている。今回の論文は、軽度の認知症へと発展する型のMCI(軽度認知障害)群の早期診断についてのものである。レカネマブやドナネマブなどの病態修飾薬が出現し、極早期の認知症診断が必要となり、今回、様々なメルクマークをチェックし、有意なものが判明したものである。結果から、前臨床ADにおいて、アミロイド(Aβ42/Aβ40)、p-tau181、神経変性(NfL)、神経炎症(GFAP)の各血液バイオマーカー値の異常が大きいことが、正常な認知機能からMCIへの進行と関連していた。今後は、軽度認知症と診断した時のICなどさらなる検討が必要であるが、病態修飾薬使用に関して有益な報告であり、取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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