難病Update

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CLIFAHDDIHPRF 1症候群IHPRF 2症候群NALCNチャネロソームUNC80

2025.03.25

NALCNおよびUNC80に関連する障害の遺伝子型と表現型の概観

Genotype-Phenotype Landscape of NALCN and UNC80-Related Disorders

Paloma Parra-Díaz*, Arnaud Monteil, Daniel Calame, Nawale Hadouiri, Luca Soliani, Egidio Spinelli, Elena Jabbour Caron, Klaus Dieterich, Amy Kritzer, Kacie Riley, Jose M Serratosa Fernández, Jeremy A Tanner, Hélène Tevissen, Christel Thauvin, Rafael Vera-Medialdea, Stephan M Waltz, Álvaro Beltrán-Corbellini*, Irene García Morales*, Irene Sánchez-Miranda Román*, Rafael Toledano*, Adrián Valls-Carbó*, Antonio Gil-Nagel*


*Department of Neurology, Hospital Ruber Internacional, Madrid, Spain.


Neurology. 2025 Apr 8;104(7):e213429. doi: 10.1212/WNL.0000000000213429. Epub 2025 Mar 6.


NALCNおよびNALCNチャネロソームのサブユニットの1つであるUNC80の遺伝的バリアントは、きわめてまれで重度の神経発達障害を引き起こす。常染色体顕性遺伝の形式をとる、先天性の四肢・顔面拘縮、筋緊張低下、発達遅延(CLIFAHDD)症候群は、NALCNの機能獲得型(GOF)バリアントと関連している。精神運動遅滞および特徴的な顔貌を伴う乳児筋緊張低下(IHPRF)1症候群はNALCNの両アレル性バリアントと関連し、IHPRF 2症候群はUNC80の両アレル性バリアントと関連しており、いずれも機能欠損(LOF)を引き起こす。本研究の目的は、これらの症候群に関連する表現型を拡張し、遺伝子型と表現型の潜在的な関連を探索することである。本研究は、NALCNおよびUNC80に病原性バリアントまたは病原性である可能性の高いバリアントを有する患者を対象とした横断的研究である。表現型は、構造化面接、質問票、医療記録のレビューにより評価した。バリアント、臨床的特徴、症候群のあいだの関連を分析した。

41例が組み入れられた(34例がCLIFAHDD、9例がIHPRF 1、8例がIHPRF 2、生後3カ月から27歳まで、女性37.3%)。全例が神経発達遅延を示し、LOFバリアントを有する患者はより重度であった(P=0.019)。CLIFAHDD症候群患者の29.4%に神経発達の退行が認められ、これは運動失調症の発症と関連していた(70%)。CLIFAHDD患者は、出生時に呼吸器症状がより重度であった(経口気管内挿管11.7%)。遠位関節拘縮症(76.5%)、反復発作性運動失調症(歩行可能な患者の41.2%)、発作性ジストニア(11.7%)はCLIFAHDD患者のみで診断された。LOFバリアントを有する患者は、発育不良(88.2%、P=0.001)、中枢性睡眠時無呼吸(CSA)(64.7%、P<0.001)、てんかん(70.6%、P<0.001)を呈する頻度がより高かった。てんかんは、より重度の認知遅延と関連しており(P=0.016)、58.8%の患者で難治性であった。発作の発症時期がより早いことが難治性てんかんと関連していた(P=0.014)。CLIFAHDD患者のうち、早期死亡、てんかん、または発作性ジストニアがみられた患者は、NALCNのポア領域にバリアントがあった。


URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40048676/

コメント

NALCNチャネルにより伝達される脱分極ナトリウム(Na+)漏洩電流は、多くのニューロンの静止膜電位を調節して呼吸や概日リズム、移動運動や痛覚感受性を調整している。ヒトでNALCNUNC80に変異が生じると重篤な発達障害や神経疾患の原因となる。今回の報告はCLIFAHDD症候群、IHPRF 1症候群、IHPRF 2症候群の検討で、NALCN関連障害およびUNC80関連障害の詳細な臨床的特徴が得られた。遠位関節拘縮症、反復発作性運動失調症、発作性ジストニアがCLIFAHDD患者で診断された一方、発育不良、CSA、てんかんはLOFバリアントと関連していた。遺伝子型と表現型の潜在的な関連が提唱されたが、これを踏まえ、著者らが指摘するように、より大規模なコホートを対象とした今後の研究が必要である。


監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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