難病Update

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childhood interstitial lung diseaseLAMP3 variantsLAMP3機能変異surfactant-related diseaseサーファクタント異常小児期間質性肺疾患

2025.03.25

サーファクタント関連疾患の小児期間質性肺疾患におけるLAMP3の両対立遺伝子変異の分析

Bi-allelic LAMP3 variants in childhood interstitial lung disease: a surfactant-related disease

Camille Louvrier*, Tifenn Desroziers, Yohan Soreze, Martha Delgado Rodriguez, Lucie Thomas, Valérie Nau, Florence Dastot-Le Moal, Jonathan A Bernstein, F Sessions Cole, Markus Damme, Anthony Fischer, Matthias Griese, Daniel Hinds, Laura Keehan, Carlos Milla, Hadhud Mohammad, Jonathan Rips, Jennifer A Wambach, Daniel J Wegner, Serge Amselem, Marie Legendre, Irina Giurgea, Sonia Athina Karabina, Oded Breuer, Aurore Coulomb l’Herminé, and Nadia Nathan

 

* Sorbonne University, Inserm UMR_S933 Laboratory of Childhood Genetic Diseases, Armand Trousseau Hospital, Paris, France; Assistance Publique Hôpitaux de Paris, Medical Genetics Department, Armand Trousseau Hospital, Paris, France. Electronic address: camille.louvrier@aphp.fr..

 

EBioMedicine. 2025 Feb 28:113:105626. doi: 10.1016/j.ebiom.2025.105626.

 

本研では、小児期間質性肺疾患(以下、chILD)の患者1例から2つのLAMP3バリアントを同定し、これまでに報告されているバリアントの機能的検証を行い、chILDの病理発生におけるLAMP3の役割を明らかにすることを目的として行ったものである。LAMP3は、ラメラ体と関連するリソソーム膜タンパク質であるLAMP3をコードし、最近では小児期間質性肺疾患(chILD)に関係した遺伝子とされている。LAMP3のバリアントについては、エクソーム・シークエンシングを行い同定した。Ex vivo研究として、鼻腔洗浄液および肺組織のmRNA解析、ならびに肺生検を用いた免疫組織化学を行った。In vitro研究として、A549細胞株について免疫蛍光染色およびLAMP3の発現解析を行った。LAMP3とサーファクタントタンパク質(SP-BおよびSP-Cとの相互作用については共免疫沈降法を使って評価分析を行った。chILD罹患の15歳の男児から2つのヘテロ接合性LAMP3バリアント(Y302Qfs*2およびT268M)を同定した。LAMP3 mRNAからフレームシフト変異によりナンセンス変異依存mRNA分解が生じていることが明らかになった。患者の肺組織においてLAMP3の発現の低下が確認された。T268Mおよび以前に報告されたG288Rバリアントの機能解析により変異タンパク質の存在が少量認められた。さらに、T268MバリアントではN-グリコシル化の低下およびタンパク質不安定性が示された。また、LAMP3SP-BおよびSP-Cとの間に相互作用があることが認められ、LAMP3とサーファクタント代謝との間に直接的な関係があることが明らかになった。LAMP3両対立遺伝子変異によるLAMP3機能障害がヘテロ接合性表現型のchILDの原因であることが明らかとなった。LAMP3とサーファクタント代謝との間に密接な関係があるがchILDの病態生理であると説明できたが、さらなる確認が必要である。本研究は資金援助を特に受けて行ったものではない。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40023045/

コメント

小児期間質性肺疾患(chILD)は呼吸器系の重篤な希少疾患でありサーファクタント関連遺伝子の異常によるとされてきている。本研究では、in vitroLAMP3タンパク質の機能がサーファクタント代謝と密接に関連していることを確かめ、LAMP3の両対立遺伝子変異がchILDの原因であることを示したものであった。本研究の結果からchILDおよび成人ILDの診断検査に、LAMP3の配列解析を含めることを提言している。本研究は、ゲノムのタンパク質コード領域(エクソン)のみを濃縮して行うエクソームシーケンシングを用いている。今後、この技術で様々な希少疾患のタンパク質の機能に関わる遺伝子変異が明らかにされていくこととなりそうに思われる。

 

監訳・コメント:関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生

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