2025.04.30
多発性硬化症再発の診断において時間的多発性が必須であるかどうかの検討
Investigating Whether Dissemination in Time Is Essential to Diagnose Relapsing Multiple Sclerosis
Wallace J Brownlee*, Michael A Foster*, Giuseppe Pontillo*, Indran Davagnanam, Sara Collorone*, Ferran Prados*, Baris Kanber*, Frederik Barkhof*, Alan J Thompson*, Ahmed T Toosy*, Olga Ciccarelli*
*Queen Square Multiple Sclerosis Centre, Department of Neuroinflammation, UCL Institute of Neurology, London, United Kingdom.
Neurology. 2025 Apr 8;104(7):e210274. doi: 10.1212/WNL.0000000000210274. Epub 2025 Mar 4.
多発性硬化症(MS)の診断には、空間的多発性(DIS)と時間的多発性(DIT)の両方の所見が必要とされる。MRIでDITを確認する代わりに、CSF中のオリゴクローナルバンド(OCB)を用いることもできる。本研究では、DISの基準を多く満たす患者において、MSの診断にDIT(またはCSF陽性)が必要かどうかを検討した。
発症後3カ月以内に脳および脊髄のMRIによる評価で初回の脱髄イベントが認められた患者を前向きに募集した。患者の臨床所見とMRI所見の追跡調査を行った。MSで典型的に侵される領域(脳室周囲、皮質/皮質直下、テント下、脊髄)の2/4以上、3/4以上、または4/4に病変があることを要件とするDIS基準と、視神経を含めた領域の2/5以上、3/5以上、4/5以上、または5/5に病変があることを要件とするDIS基準を、ベースライン評価に遡及的に適用した。ゴールドスタンダードとして、DIS(2/4以上の領域に病変がある)とMRIによるDIT(ガドリニウム造影病変または非造影病変、追跡調査での新規T2病変)またはCSF特異的なOCBの両方を要件とするMcDonald基準2017を用いて、MSの診断における各DIS基準の性能を検討した。
244例を組み入れた(平均年齢32.5歳、女性154例[63%])。平均11.2年の追跡期間中に187例(77%)がMcDonald基準2017によりMSと診断された。DISのみ(2/4以上、3/4以上、または4/4に病変があることを要件とする)の場合、MS診断の感度は低下し(それぞれ84%、58%、26%)、特異度は上昇した(91%、98%、100%)。我々は、初回の脱髄イベントが認められた患者に対し、条件を満たすDIS領域数に基づくMS診断アルゴリズムを提案する。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40036713/
コメント
今回の報告で、初回の脱髄イベントが認められた患者において、MSで典型的に侵される領域のうち4領域以上のDISは特異度が高く、結果が偽陽性となって誤診断されるリスクがきわめて低いことが示された。4領域以上のDISを用いることで、MSが疑われる患者全例においてMRIやCSF検査によるフォローアップの必要性が減り、診断プロセスが合理化されるであろうことが示唆された。ただ、著者らも指摘しているが、発症時に視神経炎を呈していた患者が過剰であったこと、CSF検査の実施率が低かったこと、光干渉断層撮影のデータが不足していたことなど、今後検討すべき点はあるが、より簡便かつ正確な診断へ貢献する論文であり、興味があり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生