2025.04.30
標的特異性を高めたインターフェロン療法としての、再発・難治性多発性骨髄腫に対するmodakafusp alfaによる治療
Targeted interferon therapy with modakafusp alfa for relapsed or refractory multiple myeloma
Dan T Vogl*, Shebli Atrash, Sarah A Holstein, Omar Nadeem, Don Benson, Maria Chaudry, Noa Biran, Kaveri Suryanarayan, Cheryl Li, Yuyin Liu, Sabrina Collins, Xavier Parot, Jonathan L Kaufman
* Division of Hematology and Oncology, Abramson Cancer Center, Perelman School of Medicine, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA.
Blood. 2025 Feb 27;145(9):944-955. doi: 10.1182/blood.2024026124.
インターフェロンαは多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)に対する抗腫瘍活性を有する。modakafusp alfaは、2つの『結合活性減弱インターフェロンα-2b分子』と『ヒト化抗CD38免疫グロブリンG4(IgG4)モノクローナル抗体』から成る免疫サイトカイン製剤であり、CD38を発現している(つまり、CD38陽性の)免疫細胞および骨髄細胞へのインターフェロンαの送達を狙ったものである。
本first-in-human第1/2相試験には、過去に3ライン以上の治療を受け、1つ以上のプロテアソーム阻害薬および1つ以上の免疫調節薬に抵抗性または不耐を示した再発・難治性多発性骨髄腫を組み入れた。用量漸増(dose escalation)部分では、10種類の投与量のmodakafusp alfaが4つのスケジュールで13コホートにおいて投与された。主要エンドポイントは、用量漸増部分では安全性、用量拡大(dose expansion)部分では全奏効率(ORR)とした。この試験では、過去に中央値で6.5ラインの治療を受けた患者106例を組み入れた。そのうち84%の患者は以前に抗CD38抗体に抵抗性を示した骨髄腫を有していた。
最適な投与スケジュールは4週間毎(Q4W)であり、その場合の最大耐量は3 mg/kgであった。1.5 mg/kg Q4Wの投与を受けた患者30例では、ORRは43.3%、奏効期間中央値は15.1ヵ月(95%信頼区間[CI]7.1 - 26.1)、無増悪生存期間中央値は5.7ヵ月(95%CI 1.2 – 14)であった。Grade 3以上の有害事象(AE)は患者28例(93.3%)に発現し、最も多かったのは好中球減少症(66.7%)および血小板減少症(46.7%)であった。また、感染症は8例(26.7%)で報告された(5例[16.7%]におけるGrade 3の感染症を含む)。modakafusp alfaは1型インターフェロン遺伝子シグネチャースコアの上昇、CD38陽性細胞におけるCD38受容体密度の上昇、ならびに自然および獲得免疫細胞の活性化を誘導した。
modakafusp alfaはMM患者において、CD38陽性細胞にインターフェロンαを送達し、抗腫瘍活性および免疫活性化をもたらした。主なAEは血液学的AEであった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39630057/
コメント
インターフェロンαは骨髄腫細胞に対する細胞傷害活性を持つが、本研究においては、興味深い改変を加えたインターフェロンα製剤(modakafusp alfa)を作成している。つまり、インターフェロンα-2b分子のインターフェロンα受容体への結合を減弱し、そして、そのインターフェロンα-2b分子と抗CD38抗体を結合している。これにより、インターフェロンα-2b分子が『標的細胞としたいCD38陽性の骨髄腫細胞および免疫細胞』に『より特異的』に送達される。その結果、主作用としたい骨髄腫細胞への傷害作用、免疫細胞の活性化作用の『より特異的』な誘導が期待できる。
また、ここで用いられている抗CD38抗体が認識するエピトープは、現在治療薬として用いられている抗CD38抗体が認識するエピトープとは別のものであり、modakafusp alfaと現在使用されている抗CD38抗体治療薬の細胞への結合時の競合はない。したがって、それらの薬剤の併用治療も可能であると考えられる。
このように、本論文においては、インターフェロンαをベースにした骨髄腫に対する新たな治療戦略が示されている。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生