難病Update

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biomarkerdiffuse cutaneous systemic sclerosisSerum type I interferonバイオマーカーびまん性皮膚全身性硬化症血清I型インターフェロン

2025.04.30

びまん性皮膚硬化型全身性強皮症患者の活動性のバイオマーカーとしてのI型インターフェロン血清スコアの有用性の検討:後ろ向きコホートによる研究

Serum type I interferon score as a disease activity biomarker in patients with diffuse cutaneous systemic sclerosis: a retrospective cohort study

Monique Hinchcliff*, Dinesh Khanna, Enrico De Lorenzis, Stefano Di Donato, Antonio Carriero, Rebecca L Ross, Suiyuan Huang, Kathleen A Aren, Elana J Bernstein, Mary Carns, Flavia V Castelino, Robyn T Domsic, Tracy M Frech, Jessica K Gordon, Faye N Hant, Ami A Shah, Victoria K Shanmugam, Virginia D Steen, Shervin Assassi, Francesco Del Galdo

 

* Department of Internal Medicine, Section of Rheumatology, Allergy, and Immunology, Yale School of Medicine, New Haven, CT, USA. Electronic address: Monique.hinchcliff@yale.edu.

 

Lancet Rheumatol. 2025 Mar 31:S2665-9913(24)00403-X. doi: 10.1016/S2665-9913(24)00403-X. Online ahead of print.

 

重症全身性硬化症とI型インターフェロン(IFN)の活性化とが関連しているとした報告があった。そこで、血清IFNスコアとびまん性皮膚硬化型全身性強皮症患者の活動性や転帰について2つの患者コホートを使って検討してみた。

 

米国の全身性硬化症コホート(Prospective Registry of Early Systemic SclerosisPRESS)と英国の強皮症コホート(Stratification for Risk of Progression in SclerodermaSTRIKE)に登録されている成人患者(18歳以上)をその健康対照者(ボランティア)の後ろ向きコホート研究として行った。対象者の血清をMyriad-Rules Based Medicine’s Luminex xMAP Technology Multiplex AssayAustin, TX, USA)を使って測定し、6つのサイトカイン(CCL2CCL8CCL19CXCL9CXCL10CXCL11)の濃度をもとに血清IFNスコアを算出した。このスコアをもとに患者を高値群と低値群に分類した。高値群とは、上記6つのサイトカイン濃度の自然対数の平均が健康対照者の標準偏差を超える者とし、低値群とは、標準偏差内に収まっている者とした。転帰は、①modified Rodnan Skin Score、②努力肺活量(FVC)、③一酸化炭素拡散能(DLCO)、④Health Assessment Questionnaire-Disability Indexの項目のベースラインと12か月時点の最小差を用いて評価した。対象は、米国コホート(PRESS)では201241日から201911日、健康対照者と英国コホート(STRIKE)では2014121日から2018121日の登録者とした。米国コホートの患者は110例(平均年齢50.2歳[SD 15.0]、女性76例・男性34例、白人87例[79%])、英国コホートの患者は72例(平均年齢51.7歳[SD 10.9]、女性50例・男性22例、白人64例[89%])であった。健康対照者は32例(平均年齢47.0SD 12.4]、女性19例・男性13例、白人24例[75%])であった。IFN高値者は、英国コホートでは110例中50例(45%)、米国コホートでは72例中27例(38%)であった。英国コホートでは、平均FVC予測値(高値群72.0%[SD 18.9]、低値群85.3%[18.5]、P0.0028)、DLCO(高値群56.8%[SD 21.6]、低値群76·6%[25.3]、P0.0008)、Health Assessment Questionnaire-Disability Index中央値(高値群1.4IQR 0.8 - 2.0]、低値群0.80.4 - 1.5]、P0.0033)であった。高値群と低値群のFVCおよびDLCOの差は追跡最終時も持続していた(FVC中央値34か月[IQR 19.8 - 54.0]、DLCO中央値34か月[IQR 22.5 - 54.0])。米国コホートでは、高値群の罹病期間中央値が短く(高値群2.2年[IQR 0.7 - 8.2]、低値群5.0年[1.9 - 10.0]、P0.035)、またベースラインのFVCまたは免疫抑制状態を補正しても12か月時点の肺の転帰が不良であった(FVC5%の相対悪化率は、高値群23例中9例[39%]、低値群41例中7例[17%]、P0.051)。累積5年死亡率は、高値群24.9%(95CI 14.9 - 39.7)、低値群8.6%(同3.6 - 19.9)であった(P0.052)。びまん性皮膚硬化型全身性強皮症患者の12か月時点の予後が不良な者を特定するのに血清IFNスコアは有用であった。

 

本研究は、National Scleroderma FoundationNational Institutes of Health National Institute of Arthritis and Musculoskeletal and Skin Diseases Rheumatic Disease Research Core CentersNational Institute of Health Research Leeds Biomedical Research CentreKennedy Trust for Rheumatology Researchから資金援助を受けた。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40179922/

 

監訳・コメント:関西大学社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生

 

本研究は、びまん性皮膚性全身性硬化症患者の2つの独立した観察コホートを使い、血清中のI型インターフェロン活性と疾患活動性および転帰との関連性を検討したものである。これまで血清インターフェロン・スコアを算出して評価したものはなかった。血清IFN高値シグネチャーが持続的に上昇したびまん性皮膚性全身性硬化症患者の臨床予後は悪く、全死亡率も高かく、IIFN活性は疾患の組織障害にも関与していることが疑われた。本研究により、早期の患者においては血清IFN高値であることと病状悪化との関連があることが示された。つまり、血清IFNスコアは同疾患の活動性評価に役立つことを示唆するものであった。

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