2025.05.28
ARIC研究参加者における高齢期のボディ・マス・インデックスおよび中年期から高齢期にかけてのボディ・マス・インデックスの変化と認知症の新規発症との関連
Association of Body Mass Index in Late Life, and Change from Midlife to Late Life, With Incident Dementia in the ARIC Study Participants
Ethan J Cannon*, B Gwen Windham, Michael Griswold, Priya Palta, David S Knopman, Sanaz Sedaghat*, Pamela L Lutsey*
*Division of Epidemiology & Community Health, University of Minnesota School of Public Health, Minneapolis.
Neurology. 2025 May 13;104(9):e213534. doi: 10.1212/WNL.0000000000213534. Epub 2025 Apr 11.
中年期の肥満は認知症の危険因子であるが、高齢期の肥満には認知症リスクが低いこととの関連が示されている。本研究では、高齢期のボディ・マス・インデックス(BMI)のカテゴリーと認知症との関連を中年期から高齢期にかけてのBMIの変化を考慮する場合としない場合とで探索することにより、このパラドックスについて検討した。
この観察コホート研究は、地域住民を対象としたAtherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究の参加者で来院5の時点(2011 - 13年)で認知症でなかった者を対象とした。認知症の確認は、対面での一連の神経心理学的検査に基づいた専門家による判定等によって行った。まず、認知症の新規発症と来院5のBMIカテゴリー(標準体重、過体重、肥満)との関連を評価した。次に、来院5のBMIカテゴリーとベースライン前15年間に発生した来院4から来院5までのBMIの変化(低下[2 kg/m2以上減]、上昇[2 kg/m2以上増]、安定[増減2 kg/m2未満])のクロス分類を用いた。Cox回帰法を用いた。
計5,129例を研究に組み入れた(女性59%、黒人と自認する参加者22%、来院5の時点での平均[標準偏差]年齢75[5]歳)。8年の追跡期間中に、参加者の20%が認知症を発症した(n=1,026)。共変量調整後、高齢期のBMIが高かった参加者は認知症のリスクが低く、ハザード比(95%CI)は、過体重で0.86(0.73 - 1.00)、肥満で0.81(0.68 - 0.96)であった。層別化モデルでは、高齢期の各BMIカテゴリーにおいて、中年期から高齢期にかけてBMIが低下した参加者のみに認知症リスクの上昇が認められた。中年期から高齢期にかけてBMIが安定していた標準体重の参加者と比較した、BMIが低下した参加者のハザード比(95%CI)は、標準体重の参加者で2.08(1.62 - 2.67)、過体重の参加者で1.62(1.25 - 2.10)、肥満の参加者で1.36(1.00 - 1.85)であった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40215425/
コメント
認知症の中で最も頻度の高いアルツハイマー病では、進行を抑える病態修飾薬が出始めている。しかし、発症を抑える機序はいまだ不明であり、現段階では、予防は最大の治療法である。今回の結果から、様々な仮説、推論はあるが、結局、パラドックス的結論ではあるが、高齢期のBMIが高かった参加者は認知症のリスクが低く、認知症リスクの層別化においては高齢期のBMIと併せて中年期から高齢期にかけての体重減少を考慮することの重要性が浮き彫りになった。予防因子における重要な指摘と考えられ、取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生