難病Update

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UHDRS成人発症型HD(AHD)若年発症型ハンチントン病(JHD)表現促進現象遺伝学的検査

2025.06.26

若年発症と成人発症のハンチントン病の臨床スペクトラムの比較:オランダ国内コホートとEnroll-HD観察研究

Comparison of the Clinical Spectrum of Juvenile- and Adult-Onset Huntington Disease: A National Cohort and Enroll-HD Observational Study

Hannah S Bakels*, Kasper F van der Zwaan*, Erik Van Zwet, Robert Reijntjes*, Gregory P Sprenger*, Thijs A Knecht*, Raymund A C Roos*, Susanne T de Bot*

*Department of Neurology, Leiden University Medical Center, the Netherlands

Neurology. 2025 May 27;104(10):e213525. doi: 10.1212/WNL.0000000000213525. Epub 2025 Apr 22.

 

若年発症型ハンチントン病(JHD)と成人発症型HD(AHD)では臨床的特徴が異なるという仮説があるが、直接比較はされていない。本研究では、発症年齢(AO)別サブタイプ間で臨床的特徴の出現頻度および重症度を比較する。

オランダ国内の若年発症型HD患者コホートと国際的なEnroll-HDレジストリ(NCT01574053)を用いて、小児期発症のJHD(cJHD、AO 0 - 10)、思春期発症のJHD(aJHD、AO 11 - 20)、成人発症型HD(AHD、AO 21 - 65)の発症時の臨床的特徴の割合、精神医学的特徴を統合データセットで比較した。Enroll-HDデータセットのUHDRS-総運動スコア(UHDRS-TMS)項目にKruskal-Wallis検定を適用し、発症後6 - 10年での運動障害の重症度を比較した。

統合データセットからは、cJHD患者46例(平均AO 6.70、女性45%)、aJHD患者243例(平均AO 16.70、女性46%)、AHD患者9,504例(平均AO 44.70、女性51%)のデータが得られた。発症時、cJHD患者では神経認知症状が47.50%(n=46、95%CI 31.80% - 63.70%)に認められ、aJHD患者、AHD患者と比較して有意に割合が高かった。aJHD患者では精神症状が47.12%(95%CI 40.20% - 54.10%)に認められ、AHD患者と比較して有意に割合が高かった。疾患の経過全体を通して、攻撃的な行動がcJHD患者では73.91%(n=46、95%CI 58.60% - 85.20%)、aJHD患者では55.88%(n=238、49.30% - 62.30%)に認められ、AHD患者と比較して有意に割合が高かった。aJHD患者では精神病症状が23.53%(95%CI 18.40% - 29.50%)に認められ、AHD患者と比較して有意に割合が高かった。Kruskal-Wallis検定の結果、JHDサブタイプの一方または両方において、以下のUHDRS-TMS項目のスコアの中央値がAHDよりも有意に高かった:構音障害、パーキンソニズム、ジストニア。また、舞踏運動のスコアの中央値はAHDよりも有意に低かった。

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40262071/

コメント

ハンチントン病診療の先進国オランダからの報告である。以前視察で訪問した国であるが、診療の参考にさせてもらったことが多い。ハンチントン病は常染色体顕性遺伝形式を示す神経変性疾患で、ポリグルタミン病の1つで、CAGの繰り返し配列の延長による発症年齢の若年化と重症化(表現促進現象)がみられる。発症年齢の相違により、運動症状、精神症状、認知症症状などの臨床症状において、多様性がみられる疾患である。今回の報告で、JHDサブタイプの臨床パターンがAHDとは明確に異なることが強調された。今後、発症年齢で定義したHDサブタイプによる層別化が必要であるが、症状をみるだけで、若年性の臨床診断が可能になり、子供の遺伝子診断が、両親のどちらかにとっての発症前診断になる可能性を避けることができる。IC上役に立つ論文と考えられ、取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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