難病Update

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AChR自己抗体補体活性化重症筋無力症

2025.08.28

AChR自己抗体の病原性特性は重症筋無力症患者において不均一に分布し経時的に変化

AChR Autoantibody Pathogenic Properties Are Heterogeneously Distributed and Undergo Temporal Changes Among Patients With Myasthenia Gravis

Fatemeh Khani-Habibabadi*, Bhaskar Roy*, Minh C Pham, Abeer H Obaid*, Beata Filipek*, Richard J Nowak*, Kevin C O'Connor*

*Department of Neurology, Yale School of Medicine, New Haven, CT.

Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2025 Sep;12(5):e200436. doi: 10.1212/NXI.0000000000200436. Epub 2025 Jul 18.

 

アセチルコリン受容体(AChR)自己抗体は、補体の活性化、受容体の内在化、アセチルコリン(ACh)結合部位の遮断という3つの機序によって重症筋無力症(MG)の病態形成に関与する。AChR自己抗体のレパートリーにおけるさまざまな病原性機序、アイソタイプ、およびIgGサブクラスの現れ方を理解することで、治療薬をより的確に適用できるようになる可能性がある。AChR IgG陽性の全身型MG患者50例から2年間にわたり縦断的に採取した血清検体(N=210)を、補体の活性化、受容体の内在化、ACh結合部位の遮断、ならびにIgMとIgAのアイソタイプおよびIgGサブクラスの頻度を測定するセルベースアッセイ一式を用いて評価した。

検体の横断的検討において、IgA自己抗体およびIgM自己抗体は、それぞれ10%および12%の患者でIgGと同時に現れていた。さらに、4%の患者で3つのアイソタイプ(IgA、IgM、IgG)が同時に現れていた。AChR-IgG1が67.4%に認められ、IgG3(21.7%)、IgG2(17.4%)と続いた。補体活性化が84.8%に認められ、AChR内在化(63%)、遮断(30.4%)と続いた。補体活性化とAChR内在化が同時に認められたのは45.6%で、補体活性化と遮断が認められたのは10.8%、3つの病理機序が認められたのは17.4%であった。遮断のみが認められたのはわずか2.1%であり、AChR内在化のみというケースはなかった。自己抗体の結合能は、補体活性化およびAChR内在化の程度と関連していた。自己抗体の結合能とそれに関連する病原性機序の経時的な変動が観察された。

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40680247/

コメント

MGでは、抗AChR抗体価と臨床症状は、ほぼ相関するが、時に、抗体価が低値でも重症例のこともあり、高値でも軽症であることは経験する。今回の報告は、これらの根拠になるが、MG患者の中に、病原性機序を媒介し得る自己抗体、または一部の治療薬において有効な標的とならないアイソタイプを含む自己抗体を有する患者がいることが浮き彫りになった。したがって、著者らが指摘するように、MGの今後の臨床試験では、包括的な自己抗体プロファイリングを組み込み、治療成績との関連の可能性をさらに検討することが必要になる可能性がある。より正確な臨床試験に役立つ報告であり、興味があり取りあげた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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