難病Update

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p-tau217アルツハイマー病初期診断抗Aβモノクローナル抗体

2025.09.29

初期のアルツハイマー病におけるアミロイドリスク層別化のためのMRI体積と血漿p-tau217の統合

Integrating MRI Volume and Plasma p-Tau217 for Amyloid Risk Stratification in Early-Stage Alzheimer Disease

Sohyun Yim*, Seongbeom Park, Kyoungyoon Lim, Heekyung Kang*, Daeun Shin*, Hyunjin Jo*, Hyemin Jang, Michael W Weiner, Henrik Zetterberg, Kaj Blennow, Fernando Gonzalez-Ortiz, Nicholas J Ashton, Sung Hoon Kang, Jihwan Yun, Min Young Chun, Eun-Joo Kim, Hee Jin Kim*, Duk L Na*, Jun Pyo Kim*, Sang Won Seo*, Kichang Kwak; K-ROAD study and the Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative

*Department of Neurology, Samsung Medical Center, Sungkyunkwan University School of Medicine, Seoul, South Korea.

Neurology. 2025 Sep 23;105(6):e213954. doi: 10.1212/WNL.0000000000213954. Epub 2025 Aug 19.


βアミロイド(Aβ)陽性の同定は、初期のアルツハイマー病(AD)におけるAβ標的療法の候補者の選択にきわめて重要である。我々は、初期ADにおけるAβPET陽性を効率的に予測するため、MRIに基づく特徴と血漿p-tau217を統合した2段階のワークフローを評価した。この前向きコホート研究では、Korea-Registries to Overcome Dementia and Accelerate Dementia Research(K-ROAD、韓国)およびAlzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI、米国)のコホートから軽度認知障害(MCI)または初期のアルツハイマー型認知症(ATD)の参加者を組み入れた。Clinical Dementia Ratingスコアが0.5で、MRI、血漿p-tau217、AβPETのデータがある参加者を適格とした。

参加者を低リスク群、中リスク群、高リスク群に層別化し、中リスク群の参加者にのみ血漿p-tau217の検査を実施した。アウトカムとして、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)、全体の正確度を評価した。

K-ROADの参加者807例(年齢中央値72.0歳、女性58.7%)およびADNIの参加者230例(年齢中央値70.9歳、女性49.1%)を解析した。感度/特異度95%の戦略を用いたところ、低リスク群のNPVは94.7%(91.7% - 97.7%、K-ROAD)および99.0%(97.0% - 100.0%、ADNI)であった。高リスク群のPPVは97.6%(95.9% - 99.3%、K-ROAD)および98.8%(96.5% - 100.0%、ADNI)であった。中リスク群の参加者の割合は33.3%(K-ROAD)および20.9%(ADNI)であった。中リスク群を対象とした血漿p-tau217の検査では、PPVが92.5%(88.7% - 96.3%、K-ROAD)および90.0%(79.0% - 100.0%、ADNI)、NPVが83.1%(75.0% - 91.2%、K-ROAD)および83.3%(66.1% - 100.0%、ADNI)であった。

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40829110/

コメント

ADの治療においては、抗Aβモノクローナル抗体を用いた免疫療法が承認され、初期診断のバイオマーカーの必要性が明らかになった。ADのバイオマーカーに関しては、最近、注目されているのが、血漿中のp-tau217で、アミロイドカスケード仮説では、Tauのリン酸化・凝集は、Aβの下流に位置し安価なADのバイオマーカーになる可能性が期待される。今回の論文で、MRIに基づくリスク層別化と血漿p-tau217の検査を統合した2段階の診断ワークフローにより、初期ADにおけるAβPET陽性者が正確に同定され、バイオマーカー検査を追加する必要性が大幅に低下した。ただ、筆者らも指摘するように、ベースラインモデルに対する改善がわずかであり、人種および民族の多様性に乏しいことから、一般化可能性は限定的であると考えられる。今後のさらなる検討が必要であるが、興味ある報告であり、取り上げた。

監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生

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