
2025.11.27
Framingham Heart Studyの中年参加者における血小板凝集とアルツハイマー病病理のマーカーとの関連
Association of Platelet Aggregation With Markers of Alzheimer Disease Pathology in Middle-Aged Participants of the Framingham Heart Study
Jaime Ramos-Cejudo*, Alexa S Beiser, Sophia Lu, Jeremy A Tanner, Matthew R Scott, Tianshe He*, Saptaparni Ghosh, Keith A Johnson, Joel Salinas, Omonigho M Bubu*, Els Fieremans, Antonio Convit*, Nunzio Pomara*, Thomas Wisniewski*, Jeffrey S Berger, Ricardo S Osorio*, Charles S Decarli, Andrew D Johnson, Sudha Seshadri
*Department of Psychiatry, NYU Grossman School of Medicine, New York.
Neurology. 2025 Nov 25;105(10):e214314. doi: 10.1212/WNL.0000000000214314. Epub 2025 Nov 4.
血管の機能障害はアルツハイマー病(AD)およびアルツハイマー病関連認知症(ADRD)に寄与しているが、根底にある機序は依然として明らかになっていない。本研究では、中年期における血小板凝集がAD病理の画像マーカーと関連しているかどうかを明らかにすることを目的とした。横断的研究で、透過光凝集測定法で測定した血小板凝集と、アミロイド(11C-ピッツバーグ化合物B)およびタウ(18F-フロルタウシピル)のPET取込みとの関連を評価した。対象者は、Framingham Heart Studyに参加していて認知症のない中年成人とした。ADに対し脆弱な領域でのアミロイドの取込みとタウの取込みを2つの主要転帰とした。人口統計学的因子および臨床的因子で調整し、非線形な関連の可能性を考慮した多変量回帰モデルを用いた。
382例(平均年齢56±8歳、女性53%)を対象に、アミロイドおよびタウのPET画像検査の約1.2 - 1.5年前に血小板凝集反応を評価した。ADシグネチャーに用いられたMRIデータは、PET画像検査と同時かその数ヵ月以内に取得された。凝集反応はAD病理と非線形な関連を示した。アデノシン二リン酸(ADP)反応が最も低い三分位に属する参加者では、血小板凝集反応は楔前部におけるアミロイド増加(β=0.047、P=0.020)、ならびに嗅皮質(β=0.077、P=0.012)、嗅内皮質(β=0.066、P<0.020)、側頭葉全体(β=0.063、P=0.031)、皮質全体(β=0.064、P=0.028)の各領域におけるタウ増加と正の関連を示した。副次的転帰の解析(n=256)では、血小板凝集反応は、ADリスクに関するMRIに基づく皮質厚シグネチャーと負の関連を示し(β=-0.002、P<0.035)、神経変性パターンと一致していた。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41187307/
コメント
以前国立循環器病研究センターから、アルツハイマー病の初期症状のためにドネペジル塩酸塩を内服している患者で、シロスタゾール投与群では認知機能の年間低下率は非投与群と比較して、有意に抑制された報告があった。しかし、いまだ、中年期における血小板凝集がAD病理の画像マーカーと関連しているかどうか、結論は得られていない。今回、アデノシン二リン酸(ADP)反応が最も低い三分位に属する参加者では、血小板凝集反応は楔前部におけるアミロイド増加(β=0.047、P=0.020)、ならびに嗅皮質(β=0.077、P=0.012)、嗅内皮質(β=0.066、P<0.020)、側頭葉全体(β=0.063、P=0.031)、皮質全体(β=0.064、P=0.028)の各領域におけるタウ増加と正の関連を示した。この結果は、早くも中年期の時点で、血小板凝集がAD病理のPETマーカーおよびMRIマーカーと関連していることを示しており、ADの病態形成における血小板を介した機序を示唆するものである。今後のさらなる検討が必要であるが、興味ある報告であり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生