
2025.11.27
ナトリウム・グルコース共輸送体-2阻害薬の自己免疫性リウマチ性疾患のリスク評価:地域ベースの大規模コホートによる研究
Sodium-glucose cotransporter-2 inhibitors and risk of autoimmune rheumatic diseases: population based cohort study
Bin Hong*, Hyesung Lee, Kyungyeon Jung, Sang Youl Rhee, Dong Keon Yon, Ju-Young Shin
*School of Pharmacy, Sungkyunkwan University, Republic of Korea.
BMJ 2025;391:e085196. doi: 10.1136/bmj-2025-085196.
韓国の全国規模の地域住民のデータベースに2012 - 2022年に登録された18歳以上の2型糖尿病患者についてSGLT-2阻害薬の自己免疫性リウマチ性疾患のリスクを評価した。対象者は2,032,157例でSGLT-2阻害薬投与552,065例、スルホニル尿素薬投与1,480,092例であった。自己免疫性リウマチ性疾患の発症を主要転帰とし、自己免疫性リウマチ性疾患の炎症性関節炎および結合組織疾患を副次的転帰として評価した。対照疾患として性器感染症および帯状疱疹の発症リスクをみた。ハザード比および十万人年対の発生率を重み付けし、その差を推定した。傾向スコア重み付けをするとSGLT-2阻害薬開始患者は1,030,088例(平均年齢58.5歳、男性59.9%)、スルホニル尿素薬開始患者1,002,069例(平均年齢58.5歳、男性60.1%)が解析の対象者となった。重み付け後の発生率(十万人年対)はSGLT-2阻害薬開始患者51.90、スルホニル尿素開始患者58.41であった。中央値9か月の追跡期間では、SGLT-2阻害薬投与者はスルホニル尿素薬投与者と比較すると自己免疫性リウマチ性疾患の発症リスクが11%低かった(ハザード比0.89[95%信頼区間(CI)0.81 - 0.98])。年齢、性別、SGLT-2阻害薬のタイプ、ベースラインの心血管疾患、肥満状態で層別化したサブグループでも同様の傾向であった。対照疾患のハザード比は、性器感染症2.78(95%CI 2.72 - 2.83)、帯状疱疹1.03(95%CI 1.01 - 1.05)であった。つまり、SGLT-2阻害薬はスルホニル尿素薬と比較すると自己免疫性リウマチ性疾患のリスクが11%低かった。しかし、最終評価するには既知の有害事象や忍容性を含めた評価が必要であり、また他の集団や状況下で再現性を評価することや自己免疫性リウマチ性疾患患者を対象としたさらなる研究が必要である。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41093607/
コメント:
ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT-2)阻害薬は、腎グルコース排泄閾値を低下させて腎グルコース再吸収を阻害することにより低血糖作用を示す経口糖尿病薬である。この薬剤には免疫調節作用があることが知られているが自己免疫病態の阻害効果が不明であった。本研究で2型糖尿病成人の大規模コホートを使い、SGLT-2阻害薬がスルホニル尿素薬と比べ自己免疫リウマチ性疾患のリスクを評価したところ約11%低下させることが示された。しかし、本当に自己免疫リウマチ性疾患のリスク下げるのかについては本研究だけでは結論が出せないとし、他の集団や他の条件で再現試験が必要としている。
監訳・コメント:関西大学大学院社会安全学研究科特別契約教授(公衆衛生学) 高鳥毛敏雄先生