難病Update

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Tr1細胞制御性T細胞急性リンパ芽球性白血病残存白血病細胞白血病微小環境

2026.02.26

白血病は、ネオアンチゲン特異的CD4陽性T細胞に1型制御性プログラムを作動させることにより、免疫を回避する

Leukemia escapes immunity by imposing a type 1 regulatory program on neoantigen-specific CD4+ T cells

Hrishi Venkatesh*, Enoc Granados Centeno*, Qianyun Luo*, Miriam Arroyo*, Lynn Heltemes-Harris*, Todd P Knutson, Yinjie Qiu, Allison Haaning, Beau R Webber, Veronika Bachanova, Michael A Farrar*, Sean I Tracy*

 

*Center for Immunology, University of Minnesota, Minneapolis, MN.

 

Blood. 2025 Dec 4;146(23):2779-2793. doi: 10.1182/blood.2024028194.

 

急性リンパ芽球性白血病(ALLacute lymphoblastic leukemia)における生体内での免疫監視の重要性についてはいまだ議論の余地がある。われわれは、B細胞性ALLの臨床検体および新規マウスモデルを用いて、白血病微小環境でネオアンチゲン特異的CD4陽性T細胞が1型制御性(Tr1type 1 regulatory)機能を作動するよう誘導されることを示す。そのTr1細胞は細胞障害性CD8陽性T細胞を抑制し、その結果、効果的な白血病の排除が妨げられる。白血病細胞は造血幹細胞の挙動を模倣することでTr1細胞を誘導する。(通常は、造血幹細胞は、このCD4陽性サブセットにより有効に免疫監視を受けている。)この機序は、Tr1細胞の役割を、がんを抑止することから臨床的再発を不適切に促進することへと効果的に方向転換させる。マウスモデルでは、細胞障害性の治療にインターロイキン10受容体(IL-10Rinterleukin-10 receptor)阻害を加えることによりTr1細胞の発生にある程度の影響を与えたが、白血病の制御を改善するには不十分であった。一方、細胞障害性薬剤と抗PDL1阻害薬の併用療法では測定可能残存病変が消失した。そして、この結果は、ネオアンチゲン特異的CD4陽性T細胞集団のTr1状態からTヘルパー1Th1T helper 1)状態への分極化と関連している。われわれの知見により、白血病の再発をもたらす、また、このがん種に対する免疫監視の役割についての従来の議論を解決するメカニズムが明らかにされる。治療によりネオアンチゲン特異的CD4陽性T細胞をTr1状態からTh1状態に向かわせることは、残存白血病細胞に対する細胞障害性攻撃に適した状態へ免疫微小環境を変化させることにより現在の免疫療法を進歩させる可能性がある。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40906918/

 

 

コメント

急性白血病の治療は大きな進歩を遂げ治癒に導くことも可能になったが、未だ、多くの症例が再発する。再発する要因は種々あり、ひとつには、白血病細胞そのものの性質(抗がん剤に対する感受性など)が考えられる。他方、白血病細胞が存在する場である腫瘍環境の状態も大きな要因になると考えられる。そして、その白血病微小環境における白血病細胞と免疫細胞の関わりは、微小残存白血病細胞の増殖制御(治癒に向かわせるか、それとも、再発に至るか)に対して大きな意味を持っていると思われる。

 

本論文は、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B細胞性急性リンパ性白血病、B-ALL)の白血病細胞と免疫細胞であるCD4陽性T細胞(CD4+ T細胞)の関係についての研究論文である。腫瘍環境においてB-ALL細胞がCD4+ T細胞にtype 1 regulatoryTr1)機能を持つように誘導し、そのように誘導された細胞集団(Tr1細胞)が抗白血病免疫応答を抑制することを示唆するデータが示されている。Tr1細胞は制御性T細胞の一種と言えるが、制御性T細胞のマスター転写因子であるFOXP3の発現なしに免疫抑制作用を発揮し得る。本論文に示された結果は、B-ALL細胞と免疫系の関わりやB-ALLの再発メカニズムを解明する上で重要な意味を持つ研究成果と思われる。

監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生

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