
2026.02.26
Genome Aggregation Database(gnomAD)を使った嚢胞性線維症の世界の発生率の解析と世界の患者に対する診断とケアのニーズの評価
Analysis of the Genome Aggregation Database (gnomAD) reveals a global burden of cystic fibrosis and the need for improved diagnosis and care
Lilly Bar*, Rebecca J. Darrah, Sriram Vaidyanathan
*Departments of Biology and Chemistry, Pomona College, Claremont, CA, 91711, USA.
EBioMedicine. 2026 Feb 2:124:106145. doi: 10.1016/j.ebiom.2026.106145. Online ahead of print.
嚢胞性線維症(CF)は多様な集団で発生している。非欧州地域における発生率が低いとされているが、欧州と非欧州の人口集団における発生率に違いがない可能性がある。そして非欧州地域の患者に対する診断と治療のアクセスの改善を図る必要があると考えて、世界のCF患者の発生率を推定することを目的に解析を行った。本研究では、Genome Aggregation Database(gnomAD、versions 2.1および4.0)を利用し、様々な人口集団における病原性CFTR変異のデータ抽出し、それをもとにハーディー・ワインベルグ平衡(HWE)を用いて出生10万人当たりの発生率を推定した。発生率(罹患率)の推定の分母人口としては国連の人口統計を用いた。通常のスクリーニングパネルでは見落とされるアレルの割合、ならびに高効率モジュレーター療法(HEMT)を用いる治療のために承認されていないアレルの割合を推定した。
既存統計では、CF患児の出生10万人当たりの発生率は、欧州の人口集団では44~52、アフリカ/アフリカ系米国の人口集団11~14、混血米国の人口集団7、南アジアの人口集団6、東アジアの人口集団4、中東の人口集団0.2~1と大きな違いがみられる。インドおよびブラジルでは出生率が高いことからCF患児の推定年間出生数は1,426~1,582および330~390であり、この患者数は米国および英国の約1,000および約300と同程度の人数であった。ところが、米国ウィスコンシン州の拡大新生児スクリーニングパネルではバリアントの見逃し率が1~30%と最も低かったが、他の非欧州の人口集団のスクリーニングパネルの見逃し率は25~70%超であると推測された。これが、地域間の既存の罹患率の違いにつながっていると推定された。また、非欧州の人口集団においては病原性アレルを有する25~40%の患者はHEMTを用いた治療承認がなされていなかった。非欧州地域のCF患児に対する診断・治療、ならびにHEMTの治療へのアクセスの改善が必要である。それにより世界の何千人ものCF患者に大きな利益がもたらされるであろう。
本研究は特に資金提供を受けていない。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41633103/
コメント:
嚢胞性線維症(CF)は、第7染色体上のCFTR遺伝子変異により、小児期より原因の全身の分泌液が粘り気を増して気管支や膵管などを詰まらせる症状が発生し、慢性呼吸器感染や栄養障害を起こす進行性の遺伝性難病である。近年CFTRモジュレーター等の薬物療法、呼吸リハビリ、栄養管理の集学的ケアなどの高効率モジュレーター療法(HEMT)が効果があるとされている。CFは欧州の人口集団に多いと報告されているが、gnomADを利用し、25ヵ国の80万人以上の異なる遺伝的祖先を持つ人々の全エクソーム配列および全ゲノム配列を解析すると非欧州地域の人口集団でも同程度の発生率であると推測された。しかし、非欧州地域の患者の多くがHEMT治療のアクセスが低い状況にあった。さらなる治療法の開発と研究が必要であるが、他方で患者を積極的に発見する対策も重要であると指摘している。
監訳・コメント:関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生