難病Update

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antiphospholipid syndromecardiovascular riskprimary APSSLE-related APS全身性エリテマトーデス関連抗リン脂質抗体症候群原発性抗リン脂質抗体症候群心血管リスク抗リン脂質抗体症候群

2026.03.30

抗リン脂質抗体症候群患者の心血管リスクの検討と原発性抗リン脂質抗体症候群患者と全身性エリテマトーデス関連抗リン脂質抗体症候群患者の心血管リスクの比較(SURF-SLE and APS project):11ヵ国の1,003症例に基づく横断研究

Cardiovascular risk factor control in antiphospholipid syndrome, and differences between primary and systemic lupus erythematosus-related antiphospholipid syndrome (SURF-SLE and APS project): a cross-sectional study of 1003 individuals from 11 countries

Eleana Bolla*, Anne Grete Semb, Michelle Petri, Petros P Sfikakis*, Bahar Artim-Esen, Gabriela Hernandez-Molina, Eric Hachulla, Haner Direskeneli, George A Karpouzas, Dina Zucchi, Mohit Goyal, Nathalie Costedoat-Chalumeau, Angela Tincani, Ayten Yazici, Karoline Lerang, Anne Troldborg, Sofia Ajeganova, Tatiana V Popkova, Elisabet Svenungsson, Nikos Pantazis, Maria G Tektonidou; SURF-SLE and APS collaborators

 

*Rheumatology Unit, First Department of Propaedeutic Internal Medicine, Joint Academic Rheumatology Program, Medical School, National and Kapodistrian University of Athens, Laiko General Hospital, Athens, Greece.

 

Lancet Rheumatol 2026 Mar;8(3):e192-e203. Doi: 10.1016/S2665-9913(25)00257-7. Epub 2025 Nov 19.

 

欧州リウマチ学会連合(EULAR)は、抗リン脂質抗体症候群(APS)の患者の心血管リスクの管理制御が重要であることを強調している。また、原発性APSと全身性エリテマトーデス(SLE)関連APSの心血管リスクに違いがあるのかまだ明らかになっていない。

 

本研究は、上記のことを確かめるために11ヵ国の17施設における2015年1月1日 – 2020年1月1日の間の18歳以上の改訂Sapporo criteriaのAPS診断基準を満たす患者を使った横断的研究である。一部施設についてはCOVID-19パンデミックがあったため調査期間を2022年まで延長した。SLE関連APS患者は、2012年のSystemic Lupus International Collaborating Clinics(SLICC)のSLE分類基準を満たした者とした。SLE以外の全身性自己免疫疾患の患者は除外した。心血管リスクの評価は、Systematic Coronary Risk Evaluationのアルゴリズムを用いて行った。心血管リスク管理の目標達成についてはEuropean Society of Cardiologyガイドラインを用いて評価した。解析には未補正・補正の混合効果ロジスティック回帰モデルを用いた。当該疾患の既往歴者に研究デザインに関与させていない。

 

対象患者は、女性779例(78%)および男性224例(22%)の1,003例であった。白人が662例(66%)、年齢中央値47.0歳(IQR 38.0 – 57.0)、罹病期間中央値11.0年(5.0 – 18.0)であった。患者の種別は、原発性APS 539例(54%)、SLE関連APS 464例(46%)であった。APSの全患者の心血管リスク因子の保有率は高く、高血圧41%、高脂血症34%、肥満32%、現喫煙19%であった。心血管リスク因子(血圧130/80 mmHg未満、BMI、脂質)を個別および複数有する患者のいずれにおいても、そのリスク因子の管理・制御が十分になされていなかった。

 

SLE関連APS患者と原発性APS患者の両者を比較すると、高血圧は50%対33%(p<0.0001)、高脂血症は40%対30%(p=0.0009)、現喫煙は16%対22%(p=0.012)であった。原発性APS患者とSLE関連APS患者の禁煙者割合は78%対84%(p=0.012)、血圧130/80 mmHg未満の割合は48%対57%(p=0.0067)であった。2つ以上の心血管リスク因子(喫煙、BMI、血圧、LDL)を有する者において管理目標達成率が低かった。特に心血管リスクが高い及び特別高いグループの患者に、2つ以上および3つ以上の心血管リスク因子(禁煙、血圧130/80 mmHg未満、BMI、LDL、トリグリセリド)の管理目標の達成率が低かった。3つ以上または4つ全ての心血管リスク因子の管理制御の目標達成率が低いことと年齢と動脈血栓症歴との間に関連が認められた。

 

今回の大規模な国際臨床研究により、APS患者は心血管リスク因子の保有率が高いこと、そのリスクの管理や制御が不良なことが明らかになった。特に原発性APS患者の心血管リスクが高いことが見逃されていた。今後、APS患者に心血管リスクが高いことを医療従事者が強く認識する必要性があることが示された。本研究は資金提供を受けていない。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41274305/

 

コメント

APS(抗リン脂質抗体症候群)の患者には血中にリン脂質に対する自己抗体が存在し、動脈血栓症や静脈血栓症、習慣流産などの妊娠合併症が起こる。APS患者の約半数が全身性エリテマトーデス(SLE)を合併し、SLEを合併しない患者が原発性APSとされている。

 

本研究において、原発性APS患者とSLE関連APS患者の間の心血管リスクを比較検討し、両者ともに血圧、BMI、脂質の心血管リスク因子の有病率が高いことが示され、そのリスク管理の目標達成率が低い現状にあることが明らかにされた。SLE関連APSと比較すると原発性APS患者に対する心血管リスク管理の必要性が看過されているとしている。そのため原発性APS患者の心血管リスクのモニタリングと管理について早期発見を進めるだけではなく、発見後に如何にして心血管リスクの管理を包括的に行うかの重要性を医療従事者が認識して対応する必要があるとしている。

 

監訳・コメント:関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生

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