
2026.04.28
血漿中のeMTBR-tau243とp-tau217を統合的に検査することによるアルツハイマー病の診断と層別化:前向きコホート研究
Integration of plasma eMTBR-tau243 and p-tau217 in the diagnosis and stratification of Alzheimer’s disease: a prospective cohort study
Niklas Mattsson-Carlgren*, Sebastian Palmqvist, Kanta Horie, Nicolas Barthélemy, Gemma Salvadó, Alexa Pichet Binette, Pontus Tideman, John C Morris, Tammie Ls Benzinger, Richard J Perrin, Shorena Janelidze, Lyduine E Collij, Rik Ossenkoppele, Suzanne E Schindler, Erik Stomrud, Randall J Bateman, Oskar Hansson
*Clinical Memory Research Unit, Clinical Sciences Malmö, Lund University, Lund, Sweden; Memory Clinic, Skåne University Hospital, Lund University, Lund, Sweden; Wallenberg Center for Molecular Medicine, Lund University, Lund, Sweden. Electronic address: niklas.mattsson-carlgren@med.lu.se.
Lancet Neurol 2026 Apr;25(4):357-367. doi: 10.1016/S1474-4422(26)00029-3.
アルツハイマー病の病理学的な診断は、血漿中リン酸化タウ(p-tau217)検査を含む血中バイオマーカー(コア1バイオマーカー)により可能であるが、バイオマーカー(コア2バイオマーカー)を組み合わせることにより、臨床診断の信頼度を高めることができるかもしれない。血漿中微小管結合領域タウのeMTBR-tau243は神経原線維変化の蓄積を反映するもので、有望なコア2バイオマーカーと考えられる。本研究は、血漿中p-tau217が陽性の患者の血漿中eMTBR-tau243を測定することにより、診断精度を高め、認知機能低下と神経原線維変化に関わる物質の蓄積を予測できるのか検討した。
対象は、Swedish BioFINDER-2研究の一環としてスウェーデンのメモリークリニック2施設における主観的な認知機能低下、軽度認知障害、または認知症を有する40歳以上の患者とした。登録し追跡し、認知機能および臨床症状を評価した。本研究の結果をKnight Alzheimer Disease Research Center(ARDC)のコホート(認知機能障害があるまたは認知障害がある者を含む)でも検証した。血漿中p-tau217の非リン酸化ペプチドに対する比(%p-tau217)及びeMTBR-tau243の濃度は質量分析法で測定した。主要アウトカムは、International Working Groupの定義に基づきアルツハイマー病の病態特異的な脳脊髄液(CSF)またはPETバイオマーカーと臨床的評価の両方で評価した。本研究のClinicalTrials.gov番号はNCT03174938である。
2017年5月18日 - 2023年9月8日の間の認知症状を有する患者は572例(主観的認知機能低下142例、軽度認知障害259例、認知症171例)であった。患者572例中、女性291例(51%)、男性281例(49%)であった。適格である患者は全例研究に組み入れ、2024年9月9日まで追跡した。%p-tau217の陽性者は572例中350例(61%)であった。341例(97%)がCSFまたはPETのバイオマーカーでアミロイドβ(Aβ)が陽性であった。最終的にアルツハイマー病と診断された者は199例(57%)であった(p-tau217のみの陽性予測値[PPV]57%、95%CI 51 - 61)。%p-tau217陽性350例中の194例(55%)がeMTBR-tau243陽性であった。確定アルツハイマー病の患者の診断正確度は81%(95%CI 76 - 84)、陽性予測値(PPV)84%(95%CI 78 - 88)、陰性予測値(NPV)77%(95%CI 68 - 82)、感度82%(95%CI 76 - 87)であった。他のコホートで検証したが同様の結果であった。%p-tau217陽性であり、eMTBR-tau243陽性である者は、認知機能低下および縦断的な神経原線維変化の蓄積悪化と関連していた。%p-tau217陽性患者でありeMTBR-tau243陽性である者は高タウPET負担患者であった(正確度は87%、PPV 76%、NPV 90%)。
血漿中の%p-tau217はアミロイドβ(Aβ)陽性の診断につながり、またeMTBR-tau243の陽性は臨床上のアルツハイマー病となる予測につながった。%p-tau217の検査を行い、陽性者に対し血漿のeMTBR-tau243を測定することにより、アルツハイマー病の病態評価及び神経原線維変化の蓄積の重症度の判断の助けになり、患者の治療指針の判断に資すると考えられた。
本研究は、Funding National Institute of Aging、European Research Council、Alzheimer’s Association、GHR Foundation、Swedish Research Council、ERA PerMed、Knut and Alice Wallenberg foundation、Strategic Research Area MultiPark at Lund University、Swedish Alzheimer Foundation、Swedish Brain Foundation、Parkinson foundation of Sweden、Cure Alzheimer’s fund、Rönström Family Foundation、Berg Family Foundation、Konung Gustaf V:s och Drottning Victorias Frimurarestiftelse、Skåne University Hospital Foundation、Michael J Fox Foundation、Lilly Research Award Program、Regionalt Forskningsstöd (Södra sjukvårdsregionen)、Wallenberg AI; Autonomous Systems and Software Program and Data-Driven Life Science joint call for research projects、Greta and Johan Kock Foundation、Swedish federal Government under the ALF agreementから資金提供を受けている。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41864233/
コメント
血漿のp-tau217とeMTBR-tau243の検査を組み合わせることに早期アルツハイマー病の診断精度を高めることができる可能性がある。本研究ではこの2段階の検査実施によりAβ陽性者の中から無症候性アルツハイマー病の可能性が高い群(eMTBR-tau243陰性)とアルツハイマー病の確定診断群(eMTBR-tau243陽性)を分類することが可能であるとしている。コア1(%p-tau217)とコア2(eMTBR-tau243)の血漿バイオマーカーを組み合わせたアプローチは効率的かつ費用対効果の高いトリアージ(多くのPET検査や髄液検査の代替)を可能とし、無症状のアルツハイマー病の過剰診断を減らすことができる可能性があるとしている。また、血漿eMTBR-tau243はタウ蓄積量が多い患者の特定に役立ち、タウ標的療法およびアミロイド標的療法の臨床試験の適切な対象者の層別化につなげることができるとしている。
監訳・コメント:関西大学名誉教授、大阪大学大学院医学系研究科委託講師 高鳥毛敏雄先生