難病Update

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2026.06.26

小児炎症性腸疾患の症例対照研究による血清プロテオミクス研究:潰瘍性大腸炎とクローン病を識別するバイオマーカーの探索

Serum proteomics in paediatric inflammatory bowel disease from a case–control study: biomarker discovery and ulcerative colitis–Crohn’s disease differentiation

Mmeyeneabasi Omede*, Hasan H. Otu, Laurie B. Grossberg, Jui-Yen Huang, Xuesong Gu, Simon T. Dillon, Handan Can, Tina Lung Morhardt, Catherine Pursley, Harland S. Winter, and Towia A. Libermann

 

*Center for Pediatric Inflammatory Bowel Disease, Mass General Hospital for Children, Pediatric Gastroenterology, Hepatology and Nutrition, Harvard Medical School, Boston, MA, USA; Harvard Medical School, Boston, MA, USA. Electronic address: momede@mgh.harvard.edu.

 

eBioMedicine 2026;128: 106311. doi: 10.1016/j.ebiom.2026.106311. Epub 2026 May 29.

 

炎症性腸疾患(IBD)の診断及び潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の識別は臨床的および病理学的な検査によりなされている。本研究では、血清プロテオミクスにより得られたタンパク質バイオマーカーをもとにIBDの診断、及びCDとUCの識別の可能性を検討した。3次医療を担う小児消化器クリニックを受診したIBD患児と非IBD患児の47例の血清サンプルから1,305のタンパク質を測定し、SomaScanプロテオミクスを行いIBDと非IBD、及びUCとCDとの識別を試みた。295人と105人の2つのコホートを用いて免疫測定法により4つのタンパク質を抽出し、サポートベクターマシン(SVM)を使い疾患予測モデルを作成した。

 

SomaScanによる探索により、95の血清タンパク質がIBDと非IBDを識別するバイオマーカー(BH p<0.01)となると同定し、70のタンパク質(p<0.01)がUCとCDを識別するバイオマーカーとなると同定した。パスウェイ解析により、IBD及びIBDとUCに特定の炎症プロセスと血管機能が関連していることが明らかになった。8つのタンパク質を用いたIBDの識別のAUCは0.95と高かった。拡張コホート(N=295)のIBDの患者では4つの主要なタンパク質(MMP1、MMP3、レジスチン、ハプトグロビン)のELISA検査値の有意な上昇が認められた。4つのタンパク質を用いたIBDの識別予測のAUCは2つの独立コホートにおいて0.86及び0.90と高かった。別の4つのタンパク質を用いた独立した分析によるUCとCDを識別するAUCは0.93とさらに高かった。

 

小児期発症の炎症性腸疾患(IBD)患者は、炎症促進経路および血管経路に関連する特有の血清タンパク質のプロファイルを有している。これらの異常なタンパク質を従来の危険因子と併用することにより、IBDを同定し、そのサブタイプの別を行う非侵襲的なバイオマーカーをもとにした精密診断ができるかもしれないが、まださらなる研究が必要である。

 

本研究は、Martin Schlaff、The Diane and Dorothy Brooks Foundation、The Manessis Family、Thomas and Lynn Kuzma、The Hasso Serrano Foundationから支援を受けた。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42214844/

 

コメント

炎症性腸疾患(IBD)は、小児および青年期に多く発症する慢性かつ再発寛解を繰り返す消化管疾患である。診断にはMR小腸内視鏡検査や大腸内視鏡検査などの侵襲的な検査が行われている。しかし近年、バイオマーカーの知見と高精度な多タンパク質診断分析技術が開発されており、それを使った非侵襲的な診断検査法を確立できる可能性がある。本研究は、包括的なSomaScanによるプロテオミクス解析と免疫測定法を用いて、小児IBDの診断ならびに潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)を識別する血清タンパク質バイオマーカーを見つけることを試みたところ、高い診断精度を示すことを達成している。しかし、血清バイオマーカーによる検査によりIBDの精度の高い識別のためにはさらなる研究が必要であり、それによりIBDの非侵襲的な精密診断と治療法の確立を図る必要がある。

 

監訳・コメント:関西大学名誉教授、大阪大学大学院医学系研究科委託講師 高鳥毛敏雄先生

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