
2026.07.29
主要な運動性の神経変性疾患において有病率の上昇をもたらす要因:スウェーデンとフランスでの経時的推移(2003 - 22年)
Drivers of Rising Prevalence in Major Motor Neurodegenerative Diseases: Temporal Trends in Sweden and France (2003–2022)
Octave Guinebretiere*, Fen Yang, Dang Wei, Quentin Calonge*, Yihan Hu, Karin Wirdefeldt, Caroline Ingre, Fredrik Piehl, Karin Modig, Weimin Ye, Maria Del Mar Amador*, Stanley Durrleman*, Gaelle Bruneteau, Celine Louapre*, Jean-Christophe Corvol*, Fang Fang, Thomas Nedelec*
*Sorbonne University, Paris Brain Institute - ICM, CNRS, Inria, Inserm, AP-HP, Hôpital de la Pitié Salpêtrière, France.
Neurology. 2026 Jul 14;107(1):e218072. doi: 10.1212/WNL.0000000000218072. Epub 2026 Jun 5.
パーキンソン病(PD)、多発性硬化症(MS)、運動ニューロン疾患(MND)の有病率は世界的に上昇している。しかし、それが発生率の上昇や診断後の生存期間の改善とどの程度関連しているかは明らかでない。住民を対象とした全国規模の後ろ向きコホート研究を2件実施した。対象者は、それぞれ2001 - 16年のスウェーデン居住者全員、2009 - 22年のフランス居住者全員とした。国をランダム効果として、統合した混合効果回帰モデルを用いて、有病率、粗発生率、年齢・性別標準化発生率、診断年齢、診断時平均余命の経時的推移を明らかにした。
統合モデルにおいて、PD、MS、MNDの年間有病率は2003 - 22年に有意に上昇した(PD:1年あたりの有病率比[PR]=1.014、P<0.001;MS:PR=1.029、P<0.001;MND:PR=1.028、P<0.001)。PDとMSの粗発生率は、いずれも経時的にほぼ一定であったが(PD:1年あたりの発生率比[IRR]=0.998、P<0.001;MS:IRR=0.992、P<0.001)、標準化発生率は、PDではより顕著に低下し(IRR=0.986、P<0.001)、MSではほぼ変わらなかった(IRR=0.995、P<0.001)。MNDについては、粗発生率と標準化発生率がいずれも経時的に上昇した(粗IRR=1.018、P<0.001;標準化IRR=1.008、P<0.001)。診断時平均余命は、PDでは2003 - 13年に長くなり(暦年あたり+0.95ヵ月、P<0.001)その後2013 - 22年に短くなった(-1.20ヵ月、P=0.002)。一方、MS(+2.35ヵ月、P<0.001)とMND(+0.34ヵ月、P=0.01)では研究期間全体を通して有意に長くなった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42247653/
コメント
「神経学の父」と呼ばれ、「振戦麻痺」を世界において初めて「パーキンソン病」と呼んだジャン・マルタン・シャルコー先生が勤務していた、サルペトリエール病院からの報告である。MSを広い意味での神経変性疾患として扱っており、少し違和感を覚えるが、患者数の推移や負担を比較するための“疾患グループ名”としての使い方であり、これについては議論していないので、このまま扱うこととした。私事で申し訳ないが、現在私は、国立病院機構の大阪市近傍の病院に非常勤医師として勤務し、パーキンソン病と認知症に特化した脳神経内科外来を担当している。当院に勤務して以降、パーキンソン病を新たに発症した初診患者が増加しており、どうしてかなあと最近思い始めたところで、本論文を興味深く拝読した。背景にある患者数増加の要因では、MNDは真の増加、MSは治療法の改善などが推測されているが、PDでは多因子、すなわち、人口の高齢化、地域格差などが要因として推測されている。超高齢社会の過疎地の病院に勤務する者として納得できる結果である。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生