
2026.08.27
米国退役軍人における軍種および階級と筋萎縮性側索硬化症の発症率との関連
Association of Military Branch and Rank With Amyotrophic Lateral Sclerosis Incidence Among United States Veterans
Andrea L Roberts*, Alexandre D Vilela Braga, Ian W Tang*, Ran S Rotem*, Lauren R Moo, Donald R Miller, Steven D Shirk, Marc G Weisskopf
*Department of Environmental Health, Harvard TH Chan School of Public Health, Boston, MA.
Neurology. 2026 Aug 25;107(4):e218303. doi: 10.1212/WNL.0000000000218303. Epub 2026 Jul 29.
軍務は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症に関して、とくに一貫して認められている危険因子の1つであるが、軍務のどの側面が関係しているかについては、ほとんど明らかにされていない。軍人におけるALS発症リスクの分布を理解することは、重要な危険因子を特定するのに役立つ可能性がある。本研究では、米国の軍種および階級とALSの新規発症との関連を明らかにすることを目的とした。2000年1月1日から2024年10月1日までの間に米国退役軍人保健局(VHA)での診療歴があり、追跡期間が2年を超える退役軍人全員を対象として、縦断的コホート研究を実施した。ALSの新規発症は診療記録から特定した。曝露として、軍種(陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊、または複数軍種)、軍での階級(士官、下士官、またはその両方)、および軍務期間を含めた。リスクの推定にはCox比例ハザードモデルを用いた。年齢を制御し、人種/民族について調整して、性別で層別化した。
解析対象は、男性9,157,938例(ALSの新規発症13,935例、追跡開始時の平均年齢56.9歳)、女性784,941例(同484例、42.4歳)であった。男性では、陸軍での軍務と比較して、空軍(ハザード比[HR]1.29、95%CI 1.23 - 1.35)、海軍(HR 1.15、95%CI 1.10 - 1.20)、沿岸警備隊(HR 1.26、95%CI 1.06 - 1.50)での軍務はALSの発症率が高いことと関連し、海兵隊(HR 0.78、95%CI 0.68 - 0.88)での軍務はALSの発症率が低いことと関連していた。士官は下士官と比較して発症率が高かった(男性:HR 1.64、95%CI 1.53 - 1.74、女性:HR 1.72、95%CI 1.31 - 2.27)。軍務期間が長いことは、ALSの発症率が低いことと関連していた。年齢で層別化したモデルでは、陸軍の退役軍人と空軍、海軍、沿岸警備隊の退役軍人とのハザード率の差は、最も若い男性群(17 - 61歳、HRの範囲1.26 - 1.51)で最大であり、最も高齢の男性群(>75 - 104歳、HRの範囲0.99 - 1.12)で最小であった。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42525902/
コメント
ボストンにあるハーバード大学の公衆衛生大学院からの論文である。以前から、軍隊とALSの発症には関連があると考えられているが、発症率が高い理由は未解明で、特定の戦争や一つの曝露だけで説明できる段階ではないようだ。今回の検討では、米軍におけるALSの発症率は軍種および階級によってかなり異なっており、その差は若い退役軍人でより大きかった。士官、および空軍、海軍、沿岸警備隊で軍務を行う者は、ALS発症リスクを高めるような軍務環境に曝露されている可能性があるようだ。軍人、そして場合によっては類似した曝露を受ける民間人への害を減らすために、関連する曝露を特定することを可及的早急に実施する必要があることも指摘された。すべての変性疾患に共通していると思うが、真の原因や遺伝因子に加え、今回検討された環境因子の関与は重要であり、興味がある論文であり取り上げた。
監訳・コメント:国立病院機構 大阪南医療センター 神経内科 狭間 敬憲先生