難病Update

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genetically informed therapiesmulti-ancestry genetic studyParkinson’s diseaseparkinsonism-associated genesパーキンソン病パーキンソン症候群関連遺伝子多民族遺伝子研究遺伝子情報に基づく治療

2026.08.27

多様な祖先をもつ人々におけるパーキンソン病の遺伝学:臨床応用に向けた原因遺伝子の変異およびリスク遺伝子の変異に関する観察的遺伝学研究

Parkinson’s disease genetics across diverse ancestries: an observational genetic study of causal and risk variants with translational implications

Lara M Lange*, Zih-Hua Fang, Mary B Makarious, Nicole Kuznetsov, Kajsa Atterling Brolin, Shannon Ballard, Soraya Bardien, Maria Leila Doquenia, Peter Heutink, Henry Houlden, Hirotaka Iwaki, Simona Jasaityte, Lietsel Jones, Johanna Junker, Rauan Kaiyrzhanov, Mathew J Koretsky, Kishore R Kumar; Latin American Research Consortium on the Genetics of Parkinson’s Disease (LARGE-PD); Hampton L Leonard, Kristin S Levine, Shen-Yang Lim, Niccoló E Mencacci, Wael M Y Mohamed, Mike A Nalls, Alastair J Noyce, Rajeev Ojha, Njideka U Okubadejo, Shoaib ur Rehman, Laurel Screven, Chingiz Shashkin, Sophia Sopromadze, Eleanor J Stafford, Ai Huey Tan, Manuela Tan, Zaruhi Tavadyan, Joanne Trinh, Bayasgalan Tserensodnom, Enza Maria Valente, Dan Vitale, Nazira Zharkinbekova, Katja Lohmann, Sara Bandres-Ciga, Cornelis Blauwendraat, Andrew B Singleton, Huw R Morris, Christine Klein; Genetics Program (GP2)

 

*Laboratory of Neurogenetics, National Institute on Aging, Bethesda, MD, USA; Institute of Neurogenetics, University of Luebeck, Lübeck, Germany. Electronic address: lara@gp2.org.

 

Lancet Neurol 2026 Aug;25(8):741-754. doi: 10.1016/S1474-4422(26)00198-5.

 

パーキンソン病の遺伝学的な構造には祖先による違いが大きいが、これまでの研究のほとんどが欧州系人種に対してのものである。本研究は、多様な祖先の集団におけるパーキンソン病の原因遺伝子変異ならびに臨床的な意義のあるリスク関連遺伝子の変異(例えば、進行中の臨床試験で標的とされている経路に関わる遺伝子変異)の分布を明らかにすることを目的として行った。

 

本研究は、Global Parkinson’s Genetics Program(GP2)リリース11(2025年12月公表)のデータを用いた多様な祖先集団を対象とした後ろ向き横断観察遺伝学研究である。パーキンソン病およびパーキンソニズムに関連していると示されている原因遺伝子の変異およびリスク遺伝子の変異(コピー数変異を含む)を、Movement Disorder Society(MDS)Task ForceによるNomenclature of Genetic Movement Disordersの推奨に従って実施した。対象遺伝子は、GBA1LRRK2SNCAVPS35RAB32PINK1PRKNPARK7ATP13A2DCTN1DNAJC6FBXO7JAM2RAB39BSLC20A2SYNJ1VPS13CWDR45とした。パーキンソン病の臨床的診断基準として、Parkinson’s UK Brain BankおよびMDSの診断基準(どちらかまたは両方)を用いた。健康対照者は、神経変性疾患の所見がなく、パーキンソン病患者の研究参加者と血縁関係にない人とした。パーキンソン病患者は58,559例、対照者は41,224例の総計99,783例について、ゲノムおよびエクソームシークエンシングならびにアレイ遺伝子タイピングを解析した。対象者は、遺伝学的に推測された11の祖先(アフリカ系、アフリカ系を含む混血、アシュケナージ系ユダヤ人、南北アメリカのラテン系および先住民、中央アジア系、複雑な混血、東アジア系、欧州系、フィンランド系、中東系、南アジア系)に由来する者であり、祖先の判断基準として集団ベースの祖先推測法を用いて特定し、パーキンソン病の患者および対照者について全ての遺伝子変異の全アレル頻度および祖先別のアレル頻度を算出した。

 

少数の祖先(例えば、非欧州系および非アシュケナージ系ユダヤ人)の者は研究対象者の約29%(99,783例中29,001例)であり、パーキンソン病の患者26.4%(58 559例中15,443)、対照者の32.9%(41,224例中13,558例)であった。複数の祖先に共通する遺伝的寄与因子と祖先別の遺伝子変異の頻度ならびにパーキンソン病関連遺伝子の変異の種類について検討した。パーキンソン病患者の2.1%(58,559例中1,217例)が原因遺伝子変異を保有していた。アフリカ系の0.4%(2,844例中10例)からアシュケナージ系ユダヤ人の10.7%(2,343 例中251例)と大きなばらつきが認められた。GBA1およびLRRK2のリスク遺伝子の変異は、パーキンソン病患者では11.8%(58,559例中6,893例)および対照者では8.7%(41,224例中3,578例に認められた。GBA1のリスク遺伝子変異は全体で最も頻度が高く、今回検討できた全ての祖先に認められた。しかし、遺伝子変異の頻度や種類は祖先により大きく異なっていた。東アジア系の者では4.1%(4,773例中195例)からアフリカ系の者の52.9%(2,844例中1,505例)と大きなばらつきが認められた。同様に、LRRK2の原因遺伝子の変異およびリスク遺伝子の変異は祖先別にばらつきが認められた。原因遺伝子の変異はアシュケナージ系ユダヤ人の10.7%(2,343例中250例)および中東系の者の4.4%(1,347例中59例)が比較的高かった。一方リスク遺伝子の変異は主として東アジア系の者に認められ、12.6%(4,773例中601例)であった。PRKNの両アレル原因遺伝子の変異(多くは遺伝子欠失および遺伝子重複)の保有者はアシュケナージ系ユダヤ人を以外の全ての祖先において認められた。中東系の者が1.3%(1,347例中17例)で最も頻度が高かく、その他の祖先の者では1%未満であった。複数の祖先を対象とした大規模遺伝学研究によりパーキンソン病の遺伝的構造に関する集団特異的な重要な知見を得ることができた。GBA1およびLRRK2の遺伝子変異保有者を対象とした臨床試験は、これまで主として欧州および米国で実施されてきたが、パーキンソン病の対象者の祖先多様性があることから診断精度の改善、異なる集団における疾患機序に対する理解をさらに深め、遺伝学的知見を活かして新規の治療研究を行い公平に適用できるものまたアクセスの保障につなげることが極めて重要な課題である。

 

本研究は、Global Parkinson’s Genetics Program(GP2)によりAligning Science Across Parkinson’s(ASAP)から支援を受けた。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42456684/

 

コメント

パーキンソン病関連遺伝子に遺伝的原因変異またはリスク変異に関するこれまでのほとんどが白人を対象とした研究であった。他方でパーキンソン病関連遺伝子とされてきたGBA1LRRK2PINK1などに祖先特異的な変異があるとの報告もなされている。そのためパーキンソン病に関する多民族遺伝学的な大規模な研究が待たれていた。本研究はヨーロッパ系祖先データセット以外の祖先のパーキンソン病患者の遺伝子および変異を検証するために行われたものであった。あらゆる祖先を持つ人々に適用可能な遺伝子情報に基づき治療法の開発が必要であり、また利用しやすいものとすることが重要な課題である。本研究はこれまでの人種が偏った研究の知見の偏りを埋め、すべての人々にあわせた診断治療の確立のために行われたものである。その有用な情報を提供している。遺伝学的な解析や診断が可能となってきていることから遺伝的要因の相違を勘案したテーラメイド治療を行う、つまり包括的な遺伝子研究と治療研究を連動して進めることが求められる時代にきていると認識させられた。

監訳・コメント:関西大学名誉教授、大阪大学大学院医学系研究科委託講師 高鳥毛敏雄先生

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