
2026.08.27
急性疼痛に対するNav1.8阻害剤の第2b相試験
Phase 2b Trial of a Nav1.8 Inhibitor for Acute Pain
Neil Singla*, Nathaniel P Katz, Ben Vaughn*, Timothy Rogier*, Todd Bertoch, Harold Minkowitz, Mallory Loflin*
*Latigo Biotherapeutics, Thousand Oaks, CA.
N Engl J Med. 2026 Jul 30;395(5):454-464. doi: 10.1056/NEJMoa2602910.
背景:末梢神経系に発現している電位依存性ナトリウムチャネルであるNav1.8は、疼痛シグナル伝達に不可欠な役割を担っている。これまでの試験では、Nav1.8阻害剤の術後疼痛の軽減における有効性が示されている。
方法:われわれは、腹壁形成術後で中等度~重度の疼痛を有する患者を対象として、選択的Nav1.8阻害剤であるLTG-001を評価する第2b相、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験を実施した。被験者は1:1:1:1の割合で、以下の群に無作為に割り付けられた:負荷投与としてLTG-001 300 mgを投与し、その後12時間おきに150 mgを投与(低用量群)、負荷投与としてLTG-001 450 mgを投与し、その後12時間おきに300 mgを投与(高用量群)、ハイドロコドン酒石酸水素塩・アセトアミノフェン(ハイドロコドン酒石酸水素塩5 mgおよびアセトアミノフェン325 mg)を6時間おきに投与、プラセボを6時間おきに投与。投与はすべて経口で、投与期間は48時間であった。主要評価項目は疼痛の強さの差の時間加重和(SPID:time-weighted sum of the pain-intensity difference)を48時間の投与期間について算出したもの(SPID48)とした。疼痛の強さは、Numeric Pain Rating Scale(範囲0 - 10、値が大きいほど疼痛がより重度なことを示す。SPID48の値が大きいほど、疼痛軽減の程度がより大きいことを示す)のスコアに基づく。副次評価項目は、モルヒネミリグラム相当量(MME:morphine milligram equivalents)でのレスキュー薬のオピオイドの使用量、およびレスキュー薬のオピオイドの投与がないことなどとした。
結果:計343名の被験者が無作為化を受けた。SPID48の最小2乗平均は低用量群で161.05(95%信頼区間[CI:confidence interval]、142.93 - 179.16)、高用量群で185.30(95% CI、167.26 - 203.34)、ハイドロコドン酒石酸水素塩・アセトアミノフェン群で164.08(95% CI、146.02 - 182.14)、プラセボ群で123.22(95% CI、105.23 - 141.21)であった。LTG-001とプラセボとのSPID48の最小2乗平均の差は、各用量群について有意であり(低用量群:37.82[P = 0.003]、高用量群:62.08[P<0.001])、ハイドロコドン酒石酸水素塩・アセトアミノフェンとプラセボとの差は40.86であった。LTG-001高用量群ではプラセボと比較してオピオイド使用量が有意に少なかった(11.00 MME対18.35 MME、P = 0.01)が、これは低用量群では認めなかった。また、LTG-001高用量群ではオピオイドのレスキュー薬を投与されなかった被験者の割合がプラセボと比較して有意に高かった。LTG-001高用量群では、プラセボと比較して発熱の発現率が高く(7%対2%)、失神寸前の状態の発現率が高かった(6%対1%)。
結論:LTG-001は腹壁形成術後48時間の投与において、プラセボと比較して優位な疼痛軽減をもたらした。(資金提供:Latigo Biotherapeutics。LTG-001-010 ClinicalTrials.gov番号:NCT07102459。)
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42526026/
コメント:
術中麻酔の効果が切れた後の術後疼痛の辛さはよく耳にするところである。疼痛シグナル伝達に不可欠な電位依存性ナトリウムチャネルであるNav1.8を選択的Nav1.8阻害剤(LTG-001)を投与することで術後疼痛が軽減したという既報はある。本試験では腹壁形成術後で中等度~重度の疼痛を有する患者を対象として、LTG-001を評価する第2b相、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験を実施した。プラセボ群だけではなく通常使用されているハイドロコドン酒石酸水素塩・アセトアミノフェン群も上回る疼痛軽減をもたらす結果であった。一方、失神寸前の状態になる頻度が6%と比較的高かった。今後症例数を増やした第3相試験の結果が待たれる。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄附講座 招へい教授 坪井 昭博先生