
2026.09.28
ミトコンドリア糖尿病の洞察:GENOMITレジストリ登録者の多国間縦断的コホート研究から
Mitochondrial diabetes mellitus: real world insights from the GENOMIT registry–a multinational, longitudinal cohort study
Luisa Semmler*, Boriana Büchner, Cornelia Kornblum, Marcus Deschauer, Saskia Wortmann, Chiara La Morgia, Serenella Servidei, Peter Freisinger, Alexander Mensch, Markus Schuelke, Holger Prokisch, Michelangelo Mancuso, Costanza Lamperti, Thomas Klopstock, GENOMIT study group
*Department of Neurology, TUM-University Hospital, Munich, Germany; Institute of Human Genetics, TUM-University Hospital, Munich, Germany; Institute of Neurogenomics, Computational Health Centre, Helmholtz Munich, Neuherberg, Germany.
eBioMedicine 2026 Sep:131:106458. doi: 10.1016/j.ebiom.2026.106458. Epub 2026 Sep 1.
糖尿病はミトコンドリア病(MD)の患者によく見られる病態である。しかし、その危険因子、臨床経過、および推奨治療薬についての十分な知見がまだない。そこで、本多国間コホートのGENOMITレジストリの遺伝子検査で確認されたMD患者のデータを縦断的に追跡して、検討を行うこととした。患者は、2009年7月 - 2025年1月にドイツ、オーストリア、およびイタリアの施設で登録された者である。本研究は、(1)ミトコンドリア糖尿病(mDM)の遺伝子型を検討する、(2)危険因子を同定する、(3)臨床経過を明らかにする、(4)抗糖尿病薬の使用の現状を明らかにする、4点を目的として行った。
登録患者は2,399例中1,225例(51%)が女性であった。2,399例の登録者の中でmDMの患者は12%の281例(女性172例)であった。糖尿病発生例に対する遺伝子検査により31の遺伝子型を認め、遺伝子型依存性が顕著であった。m.3243A>G変異保有者において、mDMの有病率(360例中177例[49%])が有意に高かった(HR=10.3、95%CI[5.2 - 20.4]、p<0.0001)。しかし、単一のmtDNA欠失、多重mtDNA欠失、およびプライマリーLHONバリアント、ならびに性別、BMI、民族、喫煙、高血圧、および脂質異常症とmDMとの間には有意な関連を認めなかった。m.3243A>G変異保有者の糖尿病発症年齢の中央値は47.7歳(SD 45.2 - 52.0)であった。mDM患者281例の使用薬は、インスリン140例(50%)、インスリン以外の抗糖尿病薬(最も多かったのはメトホルミン)111例(40%)であった。使用が最も多かった薬剤はメトホルミン薬であった。メトホルミン薬使用者50例中8例が使用を中止していた。文献レビューからは、m.3243A>G変異保有者の神経学的イベントとメトホルミンの適用と時間との関連があるとの報告があるが、他方で長期使用でも有害事象はないとの報告もあり、明確な結論が出ていない。
mDMは、MD患者に高頻度に認められる病態であり遺伝子型に強く依存していていることが示された。本研究の結果は、mDM患者に対してメトホルミンの使用を一律に回避すべきではないことを示すものであったが、治療方針の決定には遺伝子型を考慮した前向き研究を行い、さらに確かめる必要がある。
本研究は、German Ministry of Research, Technology and Space、Italian Ministry of Health、European Unionから支援を受けた。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42679752/
コメント
ミトコンドリア糖尿病(mDM)は、ミトコンドリア疾患(MD)の既知の病態であることが知られている。しかし、病態は十分に解明されていない。メトホルミンは呼吸鎖複合体Iに対する阻害作用があるために糖尿病治療薬として推奨されていない。しかし、本研究からは、メトホルミンで長年治療を受けている患者を含め有害事象のリスクが有意に増加しているとは言えなかった。結果の解釈にはまだ注意が必要であるが、一律に禁忌薬であるとは言えないことが示唆された。ミトコンドリア糖尿病(mDM)の糖尿病の治療薬の推奨についてメトホルミンを含め、さらに臨床評価試験が必要性である。
監訳・コメント:関西大学名誉教授、大阪大学大学院医学系研究科委託講師 高鳥毛敏雄先生