難病Update

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Crohn’s diseaseGene-environment interactioninflammatory bowel diseaseulcerative colitisクローン病潰瘍性大腸炎炎症性腸疾患遺伝子と環境の相互作用

2026.10.29

クローン病及び潰瘍性大腸炎のリスクに与える喫煙の関連遺伝的修飾因子のゲノムワイド解析

Genome-wide analysis of genetic modifiers of Crohn’s disease and ulcerative colitis risk in response to tobacco smoking

Jingjing Bai*, Ranko Gacesa, Johannes R. Björk*, Bernadien H. Jansen*, Klaas N. Faber*, Rinse K. Weersma*, Gerard Dijkstra*, Kimberley W. J. van der Sloot*, and Eleonora A. M. Festen; Initiative on Crohn and Colitis (ICC)

 

*Department of Gastroenterology and Hepatology, University of Groningen, University Medical Centre Groningen, Groningen, the Netherlands.

 

eBioMedicine. 2026 Oct:132:106486. doi: 10.1016/j.ebiom.2026.106486. Epub 2026 Oct 1.

 

遺伝子と環境相互作用(GxE)は、ヒトの疾患の発病機序を理解するためには不可欠なものである。喫煙は、炎症性腸疾患(IBD)においてクローン病(CD)を悪化させるが、他方で潰瘍性大腸炎(UC)に対しては保護作用を示す異なる影響を与えて関心が持たれている。そこで、IBD患者の腸管組織における喫煙に関する機能的な発現量的形質遺伝子座(eQTL)をゲノムワイドに系統的に検討した。具体的には、2つの独立コホート(コホートA:N=990、コホートB:N=2,540)を用いて、遺伝子バリアントと喫煙との乗法的交互作用を推定するメタ解析を行った。また、CDとUCを個々について逆の相互作用に関する遺伝子座の解析を行い、古典的HLAアレル/アミノ酸残基と喫煙状態との関連を検証した。IBD遺伝子型と粘膜トランスクリプトームのデータを組み合わせ、GxE-eQTLの解析を行った。共局在解析を行い、ゲノムワイド相互作用メタ解析の結果とGxE-eQTL解析の結果から、共通の遺伝子座があることを特定した。

 

IBDのリスクと喫煙との乗法的交互作用を示した独立したリード遺伝子バリアント候補の572例の有意性レベルにより優先順位付けをした(メタアナリシスのP<5.0×10−5)。その中で30の遺伝子座がCDとUCの間で顕著な逆の相互作用を示した。特にANKS1B、C7、PARD3Bの遺伝子が関与していた。HLA-DR β1には、IBDの現在の喫煙者と関連する多型性を示すアミノ酸残基が最も多く認められた。HLA-AのLeu156頻度の有意な低下はUCの元喫煙者のみに認められたが、CD患者には認められなかった(FDR<0.05)。IBD患者の腸管組織に67組の喫煙に依存的cis-eQTL-eGeneペアがあることを同定した。

 

IBDに関連する遺伝子バリアントと喫煙との間に複雑な相互作用があること、またCDとUCに喫煙に関する遺伝的要因が関与し影響を与えていること、が示された。この結果は、IBD患者に遺伝子型に基づいた予防戦略を立てることが必要であることを示唆している。

 

JBはCSCおよびUniversity Medical Center Groningen top-up Programから、EAMFはZonMwから支援を受けた。

 

URL

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42822325/

 

コメント

本研究は、炎症性腸疾患(IBD)について、遺伝子と環境の要因(喫煙)の相互作用(GxE)があることを示したものであった。IBDと喫煙と相互作用する既知の遺伝子変異群を拡大してゲノムワイドにHLAデータとトランスクリプトームデータを検討し、クローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の間で逆方向の相互作用効果を示す30個の遺伝子変異があることを明らかにしている。IBDリスクの全体像を解明するためには遺伝子と環境の相互作用に関するさらなる研究が必要とし、遺伝的に環境感受性の高い個人に対する個別的予防指針を今後開発できる可能性があるとしている。喫煙が与える影響が、疾病の種類や個々人により異なることを実証した意味で貴重な研究である。ただし、人間は喫煙だけでなく、飲酒などの飲食物や微生物など、様々な環境要因に多重に暴露された生活をしており、個別の環境因子が総合的にどう健康に影響しているのかの研究も必要である。

監訳・コメント:関西大学名誉教授、大阪大学大学院医学系研究科委託講師 高鳥毛敏雄先生

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