
2026.10.29
全身性エリテマトーデスに対する二重特異性CD3×CD19抗体:第1相試験
A bispecific CD3×CD19 antibody for systemic lupus erythematosus: a phase 1 trial
Jason Xu*, Chunli Mei*, Xin Guan*, Rong Du*, Bin Wu, Di Wu*, Mengjiao Li*, Jingna Li*, You Song*, Hua Su, Xiaoqi Chen, Qianyu Guo, Hanyang Chen, Jonathan H Sussman, Gregory M Chen, Shovik Bandyopadhyay, Vinodh Pillai, Tobias V Lanz, Michaela Liedtke, Kenan Onel, Tamiko R Katsumoto, Kai Tan, Xiaoqiang Yan, May Chien, Giselle Salmasi, Andreas Kerschbaumer, David T Teachey, Eric Meffre, Vanessa E Kennedy, William H Robinson, Anbin Huang*, Matthew C Baker, Qiubai Li
*Department of Rheumatology and Immunology, Union Hospital, Tongji Medical College, Huazhong University of Science and Technology, Wuhan, China.
Nat Med. 2026 Sep;32(9):3372-3384. doi: 10.1038/s41591-026-04572-7. Epub 2026 Sep 10.
抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)Tによる深いB細胞枯渇に関する早期の研究では、再発性の自己免疫疾患における長期、ドラッグフリー寛解をもたらしている。しかし、CAR T細胞療法にはリンパ球除去化学療法、自家細胞培養および専門設備が必要であるため、この治療による利益を受けられる患者の割合は限定的となっている。二重特異性T細胞誘導抗体(TCE:bispecific T cell engager)はB細胞枯渇のための強力で、すぐ利用可能なアプローチを提供しているが、リウマチ性疾患に対する臨床上の比較評価はいまだ限られている。今回、われわれは活動性の全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)患者12例を対象とした、次世代のCD3×CD19 TCEであるA-319の、52週の追跡調査を伴う進行中のfirst-in-disease第1相試験における静脈内投与群の結果を報告する。患者は、A-319の1週間の導入投与(0.05 μg kg-1)後、A-319(0.3-1.2 μg kg-1)を週3回、3週間投与された。主要評価項目は安全性および忍容性とした。A-319は良好な安全性プロファイルを示し、治療に関連する重篤な有害事象、死亡、グレード3以上のサイトカイン放出症候群(CRS:cytokine release syndrome)や神経毒性を認めなかった。このうち、CRSは多くがグレード1(91.6%、11/12)であり、血液学的毒性は最小限であった。副次的評価項目(薬物動態、薬力学および免疫原性)では、線形の薬物動態および用量依存性のB細胞枯渇が示され、高用量コホートでは末梢血での完全な枯渇を示した。探索的有効性評価項目のうち、12ヵ月目の時点でループス低疾患活動性状態(LLDAS:Lupus Low Disease Activity State)は患者の80%(8/10)が達成し、Definition of Remission in SLE(DORIS)は60%(6/10)が達成した。また、Systemic Lupus Erythematosus Disease Activity Index 2000(SLEDAI-2K)スコア、抗体価および蛋白尿も減少したままであった。探索的な連続シングルセルRNAシーケンシングにより、SLEに対するCD19 CAR T細胞療法後に機構の点で類似した広範な免疫リプログラミングが明らかになった。これには、B細胞、T細胞および骨髄コンパートメントにおけるSLE関連のインターフェロン応答痕跡の複数系統にわたる抑制、およびB細胞系の完全に近い再構成が含まれた。総じて、これらの知見はSLEにおけるCD3×CD19 T細胞誘導抗体の可能性、安全性および予備的な有効性を示しており、比較対照ピボタル試験においてTCEをさらに臨床開発していくことを支持している。ClinicalTrials.gov番号:NCT06400537。
URL
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42722888/
コメント:
全身性エリテマトーデスとは、全身倦怠感、発熱、食欲不振、体重減少などの全身症状と、関節、皮膚、内臓(腎臓、肺、心臓、中枢神経)などのいわゆる臓器症状が一度に、あるいは時間の経過とともに起こってくる病気である。治療薬としてはグルココルチコイド、ハイドロキシクロロキン、免疫抑制剤等が標準的に使用されている。重症度やグルココルチコイドへの反応性は症例によりまちまちで、治療抵抗例に対するさらなる治療法の開発が望まれている状況である。Bリンパ球が全身性エリテマトーデスの病態形成の中心と考えられているため、CD19産生細胞(Bリンパ球)を標的とする二重特異性T細胞誘導抗体の使用は期待される所である。今回の試験は第1相で安全性の評価が主であった。想定された通り一過性のB細胞減少は見られたものの他の重篤な有害事象は認められず本治療の忍容性を示した。副次的評価項目のSLEの重症度についても改善がみられた。またB細胞の回復期にB細胞がリセットされておりこのことが治療効果の維持に重要な役割を果たしていることが示唆された。今後ピボタル試験で安全性、有効性について評価されるものと思われる。
監訳・コメント:大阪大学大学院医学系研究科 癌ワクチン療法学寄附講座 招へい教授 坪井 昭博先生