「難病Update」は、難病に関する最新情報を、ジャーナルを限定することなく、速報として現場の医療関係者の方に届けます。難病治療・研究に携わる医師・医療従事者の方々が対象です。内容は、基礎、疫学、臨床の分野別に、各編集委員の興味あるジャーナルから合計毎月3本程度選択をいただき、日本語に原稿を編集し、監修によるコメントも掲載します(任意)。掲載する項目は、日本語英語タイトル、著者、出典、日本語サマリー、原著リンク、キーワード、監修コメント、監修者名です。毎月1日を更新日とし、皆様に提供いたします。難病研究の支援になれば幸いです。
2025.06.26NEW
Y染色体喪失がパーキンソン病のリスクおよび進行に及ぼす影響
Impact of Ychromosome loss on the risk of Parkinson’s disease and progression
Y染色体喪失(LOY)は加齢に関連する体細胞変異であり、様々な加齢関連疾患と関連していることが知られている。しかし、パーキンソン病(PD)の発症および進行との関係についてはまだ明らかではない。そこで、血液細胞におけるLOYの頻度をもとに、LOYがPDの発症リスク及び進行と関連があるのかについて検討した。
2025.06.26NEW
若年発症と成人発症のハンチントン病の臨床スペクトラムの比較:オランダ国内コホートとEnroll-HD観察研究
Comparison of the Clinical Spectrum of Juvenile- and Adult-Onset Huntington Disease: A National Cohort and Enroll-HD Observational Study
若年発症型ハンチントン病(JHD)と成人発症型HD(AHD)では臨床的特徴が異なるという仮説があるが、直接比較はされていない。本研究では、発症年齢(AO)別サブタイプ間で臨床的特徴の出現頻度および重症度を比較する。
2025.06.26NEW
低分化度のT細胞の割合を高めたCAR-T細胞製剤であるHSP-CAR30による治療は、難治性CD30陽性リンパ腫において、より持続的な奏功をもたらす
HSP-CAR30 with a high proportion of less-differentiated T cells promotes durable responses in refractory CD30 + lymphoma
CD30を標的としたキメラ抗原受容体T細胞療法(CART30)の再発性または難治性CD30陽性リンパ腫に対する有効性は限定的で、持続的な奏効を認める患者の割合は低い。われわれは、CART30の効能を向上させるための戦略を組み合わせることにより、HSP-CAR30というアカデミア発の細胞療法製剤を開発した。
総監修 | 大阪大学 名誉教授 武田 裕 |
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監訳・コメント | 大阪大学大学院医学系研究科癌ワクチン療法学寄付講座 招へい教授 坪井昭博先生 大阪大学大学院医学系研究科癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生 関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生 国立病院機構大阪南医療センター 神経内科 狭間敬憲先生 |
主催 | 公益財団法人 大阪難病研究財団 |
編集・運営 | 株式会社アスカコーポレーション https://www.asca-co.com/ |
2025.03.25
アスピリンは血小板TXA2によるT細胞免疫の抑制を抑えることで転移を予防する
Aspirin prevents metastasis by limiting platelet TXA2 suppression of T cell immunity
本研究では、アスピリンを含むシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)阻害薬が、血小板におけるトロンボキサンA2(TXA2)の産生を抑制し、TXA2によるT細胞の抑制を解除することでがん転移に対する免疫を増強することを示した。TXA2がT細胞を抑制する機序は、グアニン交換因子ARHGEF1に依存する免疫抑制経路の活性化により、T細胞のT細胞受容体(TCR)誘発キナーゼシグナル伝達、増殖、およびエフェクター機能を抑制するというものである。
2025.03.25
サーファクタント関連疾患の小児期間質性肺疾患におけるLAMP3の両対立遺伝子変異の分析
Bi-allelic LAMP3 variants in childhood interstitial lung disease: a surfactant-related disease
本研では、小児期間質性肺疾患(以下、chILD)の患者1例から2つのLAMP3バリアントを同定し、これまでに報告されているバリアントの機能的検証を行い、chILDの病理発生におけるLAMP3の役割を明らかにすることを目的として行ったものである。
2025.03.03
イングランドの5800万人を対象とした病院データーベースをもとにした331の希少疾患および関連するCOVID-19関連死亡の有病率および人口統計学的分析:後ろ向き観察研究
Prevalence and demographics of 331 rare diseases and associated COVID-19-related mortality among 58 million individuals: a nationwide retrospective observational study
COVID-19パンデミック時における数百にのぼる希少疾患を有する者における有病率や臨床的リスクを検討した研究が存在していない。本研究は全イングランドの約5,800万人の電子カルテ(EHR)をもとに希少疾患に関するCOVID-19関連死を検討したものである。
2025.02.28
血液バイオマーカーと短期および長期の軽度認知障害発症リスク
Blood-Based Biomarkers and Risk of Onset of Mild Cognitive Impairment Over the Short and Long Term
本研究では、アミロイド(Aβ42/Aβ40比)、タウ(p-tau181)、神経変性(NfL)、グリア活性化と神経炎症(神経膠原線維酸性蛋白[GFAP]、YKL40、可溶型triggering receptor expressed on myeloid cells 2[sTREM2])の血液バイオマーカーについて、認知機能が正常なときに採取された値が軽度認知障害(MCI)発症までの期間と関連しているかどうかを検討した。
2025.02.28
切除不能膵臓癌において、多機能型Wilms’ tumor 1(WT1)ペプチドをパルスした樹状細胞ワクチンと多剤化学療法の併用療法は腫瘍微小環境を修飾しコンバージョン手術を可能にする
Dendritic cells pulsed with multifunctional Wilms’ tumor 1 (WT1) peptides combined with multiagent chemotherapy modulate the tumor microenvironment and enable conversion surgery in pancreatic cancer
本研究の目的は、新規Wilms’ tumor 1(WT1)ペプチドをパルスした樹状細胞(dendritic cell)ワクチン(WT1-DCワクチン)と多剤化学療法を併用する化学免疫療法レジメンを開発し、そして、切除不能進行期膵管線癌(unresectable advanced pancreatic ductal adenocarcinoma: UR-PDAC)患者を対象にその安全性、臨床転帰、およびWT1特異的免疫応答を検討することである。
2025.01.30
認知障害、疲労、気分障害を有する多発性硬化症患者における萎縮のパターン
Atrophy Patterns in Patients With Multiple Sclerosis With Cognitive Impairment, Fatigue, and Mood Disorders
多発性硬化症(MS)によくみられる認知障害、疲労、不安、うつと萎縮のパターンを特定することを目的とした。McDonald基準2017を満たす再発寛解型MS患者と、同じような年齢、性別、学歴の健康な対照者(HC)を組み入れた横断的コホート研究を実施した。
2025.01.30
2019年の0 - 14歳の小児の結核性髄膜炎の世界的負担の推計
Global burden of tuberculous meningitis in children aged 0 - 14 years in 2019: a mathematical modelling study
結核性髄膜炎は、治療しなければ致死率が高く、生存したとして神経学的後遺症を残す可能性が高い疾患であるが、小児の罹患者が世界に何人いるのかのデータはない。そこで、2019年時点の小児の結核性髄膜炎の世界の疾患負担および同疾患の死亡率を、WHOの地域別、年齢群別、治療状態、およびHIV感染状況別に、文献データのメタアナリシスによる数値をもとにベイズ数学モデルを用いて推定した。
2025.01.30
ヒトにおける複数のワクチンに対する抗体反応持続の予測因子および機序についてのシステムワクチン学解析
System vaccinology analysis of predictors and mechanisms of antibody response durability to multiple vaccines in humans
本研究では、抗体反応の大きさと持続性に影響を及ぼす因子を同定する目的でシステムワクチン学的解析を行い、AS03アジュバントがある場合とない場合とでヒトにおけるH5N1型インフルエンザワクチンに対する免疫反応について検討した。
2024.12.25
筋ジストロフィー患者および筋強直性ジストロフィー患者におけるがんリスク 登録に基づくコホート研究
Cancer Risk in Patients With Muscular Dystrophy and Myotonic Dystrophy A Register-Based Cohort Study
スウェーデンの全国登録のデータを用いて、筋ジストロフィー患者および筋強直性ジストロフィー患者のがん全体のリスクと、がんリスクの範囲を明らかにすることを目的とした。1950 - 2017年にスウェーデンで出生した筋ジストロフィーまたは筋強直性ジストロフィーの患者全例と、性、出生年、出生県でマッチさせた対照者(患者1例につき50例)を対象に、マッチングコホート研究を行った。
2024.12.25
特発性脳内出血患者に対する手術後のアセチルサリチル酸の早期投与と晩期投与の安全性および有効性の比較(E-start試験):中国における多施設共同前向き非盲検エンドポイント盲検化無作為化試験
Safety and efficacy of early versus delayed acetylsalicylic acid after surgery for spontaneous intracerebral haemorrhage in China (E-start): a prospective, multicentre, open-label, blinded-endpoint, randomised trial
非外傷性脳内出血患者は術後に重大で有害な心血管、脳血管、および末梢血管イベントのリスクが高く、それが致死症となる場合がある。特発性脳内出血患者に対して術後の虚血イベントを予防することに抗血小板薬療法が効果的であるが、術後の最適投与時期が明らかにされていない。本研究は特発性脳内出血の手術後に、抗血小板薬であるアセチルサリチル酸を早期開始する場合と晩期開始する場合の安全性および有効性を比較するために行った。