「難病Update」は、難病に関する最新情報を、ジャーナルを限定することなく、速報として現場の医療関係者の方に届けます。難病治療・研究に携わる医師・医療従事者の方々が対象です。内容は、基礎、疫学、臨床の分野別に、各編集委員の興味あるジャーナルから合計毎月3本程度選択をいただき、日本語に原稿を編集し、監修によるコメントも掲載します(任意)。掲載する項目は、日本語英語タイトル、著者、出典、日本語サマリー、原著リンク、キーワード、監修コメント、監修者名です。毎月1日を更新日とし、皆様に提供いたします。難病研究の支援になれば幸いです。
2022.06.29NEW
成人のドラベ症候群患者における歩行・運動異常の進行性悪化
Progressive Worsening of Gait and Motor Abnormalities in Older Adults With Dravet Syndrome
研究の主要目的は、成人のドラベ症候群(Dravet syndrome:DS)患者の歩行・運動症状を調査することであった。この研究には、前向きに調査した1群が含まれ、6例(平均年齢32歳)をUnified Parkinson's Disease Rating Scale修正版(mUPDRS)を用いて2014年に調査し、2019年に再調査した。横断的調査群では、2014年に評価を受けていない患者にmUPDRSを用いた検査を行い、機器を用いた歩行解析(instrumental gait analysis:IGA)も行った。IGAは、センサーおよび矢状面と冠状面を撮影する2台のカメラを組み合わせた歩行マットを用いるProtoKineticsソフトウェアで行った。DS患者群17例(平均年齢31歳)を対象にIGAを行った。健康な81例(平均年齢62歳)を対照群とした。
2022.06.29NEW
関節炎における軟骨変性とフィブリン沈着との関連の検討
Fibrin deposition associates with cartilage degeneration in arthritis
炎症性関節炎における軟骨損傷は、炎症性サイトカインおよびパンヌス(炎症により関節滑膜細胞が増殖形成してつくられる絨毛状組織)によっておこる。また、凝固系の活性化が関節炎、特に関節リウマチでみられる特徴の一つとなっている。このフィブリンと軟骨変性との関係について、関節組織を使い実験で確かめた。
2022.06.29NEW
経口アザシチジンは測定可能残存病変の状態にかかわりなく寛解期の急性骨髄性白血病(AML)患者の生存期間を延長させる
Oral azacitidine prolongs survival of patients with AML in remission independently of measurable residual disease status
強力な化学療法施行後に寛解期にある急性骨髄性白血病(AML)患者の測定可能残存病変(measurable residual disease:MRD)は、早期再発および予後不良の予測因子である。MRD陰性の状態を延長させる、あるいはMRD陽性の患者のそれを陰性化させる寛解後の維持療法は、再発を遅延または予防し、全生存期間(overall survival:OS)を改善する可能性がある。第3相QUAZAR AML-001試験では、低メチル化剤である経口アザシチジン(経口AZA、旧名称CC-486)は、強力な化学療法後の第一寛解期にあって造血幹細胞移植の候補にならない55歳以上のAML患者のOSおよび無再発生存期間(relapse-free survival:RFS)をプラセボと比較して有意に延長させた。
総監修 | 大阪大学 名誉教授 武田 裕 |
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監訳・コメント | 大阪大学大学院医学系研究科癌ワクチン療法学寄付講座 招へい教授 坪井昭博先生 大阪大学大学院医学系研究科癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生 関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 教授 高鳥毛敏雄先生 国立病院機構大阪南医療センター 神経内科 狭間敬憲先生 |
主催 | 公益財団法人 大阪難病研究財団 |
編集・運営 | 株式会社アスカコーポレーション https://www.asca-co.com/ |
2021.12.24
新規の『RMFペプチド-MHC複合体に特異的なT細胞二重特異性抗体』を用いた急性骨髄性白血病の細胞内WT1を標的とした治療
Targeting intracellular WT1 in AML with a novel RMF-peptide-MHC specific T-cell bispecific antibody
抗体を用いた免疫療法は、化学療法に対する耐性を示す白血病細胞に対する有望な治療法であるが、従来の抗体療法の標的は細胞の系統に特異的な細胞表面抗原に限られている。細胞内の抗原を標的とすることで、白血病に関連するその他の多くの標的が抗体療法の対象になり得ると考えられる。本研究では、CrossMabおよびknob-into-holesの技術を用いて作製された新規T細胞二重特異性(T-cell bispecific: TCB)抗体を評価した。
2021.11.26
抗IgLON5抗体関連疾患:新たな球発症型運動ニューロン類縁症候群
Anti-IgLON5 Disease: A New Bulbar-Onset Motor Neuron Mimic Syndrome
抗IgLON5血清陽性で球麻痺型運動ニューロン疾患様の表現型を呈する5例を新たに加えることにより、抗IgLON5抗体関連疾患のスペクトルを拡大する。この5例の患者の臨床経過、脳MRIと検査の所見、および治療に対する反応の特徴を明らかにした。
2021.11.26
赤血球に発現するTLR9にDNAが結合すると、自然免疫の活性化と貧血が促進される
DNA binding to TLR9 expressed by red blood cells promotes innate immune activation and anemia
赤血球は血流を介して組織へ酸素を運搬することで細胞の好気呼吸に不可欠な役割をはたしている。これまで赤血球は免疫学的には不活性と考えられており、二次的な機能はほとんど確認されていない。本研究により、赤血球は核酸を感知するToll様受容体9(TLR9)を細胞表面に発現することにより重要な免疫センサーとして機能することが示された。
2021.11.26
EAS Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration(FHSC)に登録されている家族性高コレステロール血症の診断と治療の現状に基づく今後の世界的な展望
Global perspective of familial hypercholesterolaemia: a cross-sectional study from the EAS Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration (FHSC)
欧州アテローム性動脈硬化症協会によるFamilial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration (FHSC)の登録者のデーターを使い、「ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症」の成人の診断と管理の現状について分析を行った。分析対象は、FHSCにおいて、臨床または遺伝子により診断されたヘテロ接合性家族性高コレステロール血症である可能性が高い、または確定された成人(18歳以上)の症例である。
2021.10.26
高齢のパーキンソン病患者におけるpimavanserinの使用に伴う入院および死亡のリスク
Risk of Hospitalization and Death Associated With Pimavanserin Use in Older Adults With Parkinson Disease
Pimavanserinの使用に伴う入院および死亡のリスクを明らかにする。2015年11月1日 - 2018年12月31日に、65歳以上のパーキンソン病の成人を対象とした長期療養施設の入所者に関する行政データおよび請求データを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。
2021.10.26
慢性非がん性疼痛及びがん性疼痛に対する医療用大麻またはカンナビノイド:無作為化臨床試験のシステマティックレビューとメタアナリシス
Medical cannabis or cannabinoids for chronic non-cancer and cancer related pain: a systematic review and meta-analysis of randomised clinical trials
医療用大麻及びカンナビノイドが慢性疼痛に対して有効かどうかについての評価が定まっていない。そのために、MEDLINE、EMBASE、AMED、PsycInfo、CENTRAL、CINAHL、PubMed、Web of Science、Cannabis-Med、Epistemonikosの論文データーベース中の2021年1月までの臨床試験のシステマティックレビューとメタアナリシスを行った。対象は、追跡期間1か月以上の無作為化した臨床試験のものとした。
2021.10.26
CD19を標的とするCAR T細胞療法後に再発した、またはこの治療に不応のB細胞リンパ腫に対するペムブロリズマブ
Pembrolizumab for B-cell lymphomas relapsing after or refractory to CD19-directed CAR T-cell therapy
CD19を標的とするキメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)療法は、再発または難治性大細胞型B細胞リンパ腫患者の30 - 40%において長期の寛解を達成する。T細胞の疲弊および/または免疫抑制性の腫瘍微小環境は、そのCAR T細胞療法が十分な効果を発揮できない原因になり得る。PD1に対する抗体(免疫チェックポイント阻害薬)であるペムブロリズマブはCAR T細胞療法後のT細胞の疲弊を回復させる可能性がある。CD19を標的とするCAR T細胞(共刺激分子4-1BBを組み入れている)に不応の(9例)、またはこの治療後に再発した(3例)B細胞リンパ腫患者12例に、ペムブロリズマブ200 mgを3週ごとに静脈内投与した。
2021.09.24
再発または難治性B細胞悪性腫瘍を有する成人患者に対するCD19およびCD22を二重標的とするCAR-T細胞:第1相試験
CAR T cells with dual targeting of CD19 and CD22 in adult patients with recurrent or refractory B cell malignancies: a phase 1 trial
CD19を標的とするキメラ抗原受容体T細胞(CAR19)の進歩は著しいが、投与を受けた患者の半数以上に進行が認められる。CAR19の投与後に進行が確認された大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者16例中10例では、CD19は検出されないか、検出されてもわずかであった。投与前の細胞表面におけるCD19の低発現は、増悪と関連していた。
2021.09.24
新型コロナウイルス感染症(covid-19)ワクチン接種および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)検査陽性後の血小板減少症と血栓塞栓症のリスク:自己対照症例シリーズ研究
Risk of thrombocytopenia and thromboembolism after covid-19 vaccination and SARS-CoV-2 positive testing: self-controlled case series study
新型コロナウイルス感染症(covid-19)のワクチン接種後に血小板減少症および血栓塞栓性などの血栓症の発生リスクがあることが指摘されている。2020年12月1日 - 2021年4月24日の期間にイングランドでワクチン接種を受けた約3,000万人の患者データを使って評価した。
2021.09.24
二次性進行型多発性硬化症における有効性の高い治療法と低い治療法の効果
Effects of High- and Low- Efficacy Therapy in Secondary Progressive Multiple Sclerosis
二次性進行型多発性硬化症(secondary progressive multiple sclerosis:SPMS)で最近活動性が認められた患者と認められなかった患者を対象に、治療効果の遅延を考慮したうえで有効性の高い治療と低い治療の臨床効果を比較する。