「難病Update」は、難病に関する最新情報を、ジャーナルを限定することなく、速報として現場の医療関係者の方に届けます。難病治療・研究に携わる医師・医療従事者の方々が対象です。内容は、基礎、疫学、臨床の分野別に、各編集委員の興味あるジャーナルから合計毎月3本程度選択をいただき、日本語に原稿を編集し、監修によるコメントも掲載します(任意)。掲載する項目は、日本語英語タイトル、著者、出典、日本語サマリー、原著リンク、キーワード、監修コメント、監修者名です。毎月1日を更新日とし、皆様に提供いたします。難病研究の支援になれば幸いです。
2025.07.29NEW
化学受容体は脂質を感知することでマクロファージのがんに対する機能を制御している
Chemosensor receptors are lipid-detecting regulators of macrophage function in cancer
マクロファージの腫瘍への浸潤はがんの進行を表す特徴であり、腫瘍随伴マクロファージ(TAM)を抗腫瘍的な状態へ再教育することは、免疫療法の戦略として期待されている。しかし、がん細胞がマクロファージの教育に影響を与えるメカニズムは明らかではないため、こうしたアプローチの治療上の可能性は限定的なものにとどまっている。
2025.07.29NEW
特発性肺線維症患者の希少遺伝子変異と生命予後との関連性:多施設共同観察コホート研究と他のコホートでの検証結果から
Rare variants and survival of patients with idiopathic pulmonary fibrosis: analysis of a multicentre, observational cohort study with independent validation
特発性肺線維症(IPF)患者において、テロメア関連遺伝子のまれな特定の変異が予後不良と関連があることが知られている。本研究では、単遺伝子性成人発症肺線維症の遺伝子の希少適格変異が生命予後と関連しているのか検証した。
2025.07.29NEW
地域住民における血中リポ蛋白値とアルツハイマー病発症との関連 Framingham Heart Study
Association of Blood Lipoprotein Levels With Incident Alzheimer Disease in Community-Dwelling Individuals: The Framingham Heart Study
心血管危険因子は、アルツハイマー病(AD)発症リスクの重要な寄与因子である。心血管系の健康状態とAD発症リスクとの生理学的関連をさらに探るため、地域で暮らす高齢者を対象に、さまざまな血中リポ蛋白の値とAD発症リスクとの関連を検討した。
総監修 | 大阪大学 名誉教授 武田 裕 |
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監訳・コメント | 大阪大学大学院医学系研究科癌ワクチン療法学寄付講座 招へい教授 坪井昭博先生 大阪大学大学院医学系研究科癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生 関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生 国立病院機構大阪南医療センター 神経内科 狭間敬憲先生 |
主催 | 公益財団法人 大阪難病研究財団 |
編集・運営 | 株式会社アスカコーポレーション https://www.asca-co.com/ |
2025.01.30
ヒトにおける複数のワクチンに対する抗体反応持続の予測因子および機序についてのシステムワクチン学解析
System vaccinology analysis of predictors and mechanisms of antibody response durability to multiple vaccines in humans
本研究では、抗体反応の大きさと持続性に影響を及ぼす因子を同定する目的でシステムワクチン学的解析を行い、AS03アジュバントがある場合とない場合とでヒトにおけるH5N1型インフルエンザワクチンに対する免疫反応について検討した。
2024.12.25
筋ジストロフィー患者および筋強直性ジストロフィー患者におけるがんリスク 登録に基づくコホート研究
Cancer Risk in Patients With Muscular Dystrophy and Myotonic Dystrophy A Register-Based Cohort Study
スウェーデンの全国登録のデータを用いて、筋ジストロフィー患者および筋強直性ジストロフィー患者のがん全体のリスクと、がんリスクの範囲を明らかにすることを目的とした。1950 - 2017年にスウェーデンで出生した筋ジストロフィーまたは筋強直性ジストロフィーの患者全例と、性、出生年、出生県でマッチさせた対照者(患者1例につき50例)を対象に、マッチングコホート研究を行った。
2024.12.25
特発性脳内出血患者に対する手術後のアセチルサリチル酸の早期投与と晩期投与の安全性および有効性の比較(E-start試験):中国における多施設共同前向き非盲検エンドポイント盲検化無作為化試験
Safety and efficacy of early versus delayed acetylsalicylic acid after surgery for spontaneous intracerebral haemorrhage in China (E-start): a prospective, multicentre, open-label, blinded-endpoint, randomised trial
非外傷性脳内出血患者は術後に重大で有害な心血管、脳血管、および末梢血管イベントのリスクが高く、それが致死症となる場合がある。特発性脳内出血患者に対して術後の虚血イベントを予防することに抗血小板薬療法が効果的であるが、術後の最適投与時期が明らかにされていない。本研究は特発性脳内出血の手術後に、抗血小板薬であるアセチルサリチル酸を早期開始する場合と晩期開始する場合の安全性および有効性を比較するために行った。
2024.12.25
母になることへの希望:同種造血幹細胞移植後の妊娠(全国多施設共同研究)
Hope for motherhood: pregnancy after allogeneic hematopoietic cell transplantation (a national multicenter study)
同種造血幹細胞移植(alloHCT)後の長期生存率の改善により、若年成人のがんサバイバーにとっての家族計画が重要なテーマとなっている。しかしながら、この治療に関連する不妊リスクは、alloHCT治療を受けた女性に難題をもたらす。本研究では、現代コホートにおける妊娠率および出生率を評価するため、2003 - 2018年にalloHCTを受けた18 - 40歳の成人女性を対象として、German Transplant Registryのデータを用いて全国多施設共同研究を実施した。
2024.11.26
前頭側頭葉変性症における脳体積および認知機能に対するTMEM106Bの遺伝子特異的な影響
Gene-Specific Effects on Brain Volume and Cognition of TMEM106B in Frontotemporal Lobar Degeneration
TMEM106B(Transmembrane protein 106B)は、特にGRN病原性変異キャリアにおけるFTLD-TDPの疾患リスクの修飾因子として提唱されてきた。本研究の目的は、一般的な遺伝性FTD群それぞれおよび孤発性FTD患者において、TMEM106Bが灰白質体積および認知機能に及ぼす影響を評価し比較することである。
2024.11.26
mRNAワクチン接種後SARS-CoV-2特異的形質細胞は骨髄中の長寿命形質細胞分画で持続的に検出されない
SARS-CoV-2-specific plasma cells are not durably established in the bone marrow long-lived compartment after mRNA vaccination
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するmRNAワクチンは、重症疾患に至るのを防ぐ上で効果的であるが、SARS-CoV-2特異的形質細胞が骨髄に認められたとしても、防護作用を有する抗体は急速に減弱する。本研究では、この逆説的な現象を探究するため、SARS-CoV-2 mRNAワクチンの接種後2.5 - 33ヵ月の健康成人19例を登録し、骨髄中の長寿命形質細胞(LLPC)および非LLPCにおいて、インフルエンザ、破傷風、またはSARS-CoV-2に特異的な抗体分泌細胞(ASC)を測定した。
2024.11.26
大うつ病性障害者における白質微小構造と認知機能低下との関連性:ドイツにおける前向き症例対照コホート研究から
Associations between white matter microstructure and cognitive decline in major depressive disorder versus controls in Germany: a prospective case-control cohort study
大うつ病性障害(MDD)者の主要障害として認知障害がある。MDDが進行すると認知障害が悪化し、これには白質微小構造の変化との関係があると考えられている。そこで、MDD者を対象に白質の変化と認知障害との間に関連があるのか、またMDDの進行との関連があるのか、について前向き追跡調査により検討を行った。
2024.10.29
発作中および発作外に抗MOG抗体陽性を認めた小児および成人における2023年のMOGAD診断基準の検討
Investigating the 2023 MOGAD Criteria in Children and Adults With MOG-Antibody Positivity Within and Outside Attacks
2023年の抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白抗体関連疾患(MOGAD)診断基準は、成人では有用であるが小児では評価されていない。この全国規模の前向き観察研究は、Institut d'Investigacions Biomèdiques August Pi i Sunyer-Hospital Clínic of Barcelona(スペイン)において、脱髄性症候群または脳炎を有し、血清または脳脊髄液(CSF)のMOG-免疫グロブリンG(IgG)陽性が認められた小児および成人の患者を対象とした。
2024.10.29
マルチドメイン融合リガンドを有するレンチウイルスベクターを用いた、非ヒト霊長類におけるCAR T細胞のin vivo生成
In vivo CAR T-cell generation in nonhuman primates using lentiviral vectors displaying a multidomain fusion ligand
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、B細胞性悪性疾患の治療において革新的な有効性を示した。しかし、その広範な使用を妨げている阻害要因として、高価であること、また製造工程が複雑であることなどが挙げられる。こうした阻害要因を克服するために、われわれは新規プラットフォームVivoVecを開発した。
2024.10.29
Susac症候群のグルココルチコイド治療とそれに加えて免疫抑制薬または静注免疫グロブリン製剤を加えた治療の比較評価:フランスの全国患者のコホート研究
Immunosuppressive agents or intravenous immunoglobulin in addition to glucocorticoids in the treatment of Susac syndrome: a French national cohort study
Susac症候群は、主に若年女性に好発し、脳、網膜、内耳に限局した微小血管閉塞を特徴とした稀な疾患である。Susac症候群の治療に関する無作為化対照研究やコホート研究は見当たらなかった。Susac症候群の患者に対するグルココルチコイド単独治療と免疫抑制薬併用または静注免疫グロブリン剤を加えた併用治療について、前向きコホートを使い再発率を効果判定指標として評価した。