「難病Update」は、難病に関する最新情報を、ジャーナルを限定することなく、速報として現場の医療関係者の方に届けます。難病治療・研究に携わる医師・医療従事者の方々が対象です。内容は、基礎、疫学、臨床の分野別に、各編集委員の興味あるジャーナルから合計毎月3本程度選択をいただき、日本語に原稿を編集し、監修によるコメントも掲載します(任意)。掲載する項目は、日本語英語タイトル、著者、出典、日本語サマリー、原著リンク、キーワード、監修コメント、監修者名です。毎月1日を更新日とし、皆様に提供いたします。難病研究の支援になれば幸いです。
2023.09.28NEW
PD-1阻害により幹細胞様CD8 T細胞の自己複製が増加して、エフェクター分化による同細胞の減少を補う
PD-1 blockade increases the self-renewal of stem-like CD8 T cells to compensate for their accelerated differentiation into effectors
PD-1陽性TCF-1陽性幹細胞様CD8 T細胞には、プログラム細胞死蛋白質-1(PD-1)阻害療法後にエフェクターCD8 T細胞分化の亢進がみられる。しかし、これに伴ってこれらの幹細胞様前駆細胞数が減少するかどうかは不明である。そこでこの研究では、慢性リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)感染マウスモデルを用いて、このことについて検討した。
2023.09.28NEW
オーストラリア全住民を対象とした認知症の低減可能リスクの集団寄与危険割合の人種別の検討:横断調査データを用いた解析
Potentially modifiable dementia risk factors in all Australians and within population groups: an analysis using cross-sectional survey data
認知症は、オーストラリア住民の疾病負担として2番目に大きい問題である。オーストラリアの全住民(先住民族、ヨーロッパ系およびアジア系の人々)を対象として、認知症の予防に関わるとして社会的に知られている12の要因(教育歴、難聴、高血圧、肥満、喫煙、うつ、社会的孤立、運動不足、糖尿病、過度の飲酒、大気汚染、外傷性脳損傷)の集団寄与危険割合(PAF)を試算してみた。
2023.09.28NEW
レビー小体型認知症患者における血漿中のリン酸化タウとneflamapimod投与に対する反応との関連
Association of Plasma Phosphorylated Tau With the Response to Neflamapimod Treatment in Patients With Dementia With Lewy Bodies
レビー小体型認知症(DLB)患者の一部には、アルツハイマー病(AD)の共通病理との関連がみられ、これが認知機能低下の加速および皮質の萎縮範囲の拡大に結び付く。今回の目的は、AD共通病理のバイオマーカーである血漿中タウの181番目の残基のリン酸化(ptau181)と、DLBのコリン作動性変性過程を標的とするp38αキナーゼ阻害薬neflamapimodの投与効果との関連を評価することであった。
総監修 | 大阪大学 名誉教授 武田 裕 |
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監訳・コメント | 大阪大学大学院医学系研究科癌ワクチン療法学寄付講座 招へい教授 坪井昭博先生 大阪大学大学院医学系研究科癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生 関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 教授 高鳥毛敏雄先生 国立病院機構大阪南医療センター 神経内科 狭間敬憲先生 |
主催 | 公益財団法人 大阪難病研究財団 |
編集・運営 | 株式会社アスカコーポレーション https://www.asca-co.com/ |
2020.12.23
米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)の新薬の迅速承認制度と新薬の治療価値との関連性:後向きコホート研究
Association between FDA and EMA expedited approval programs and therapeutic value of new medicines: retrospective cohort study
新薬に対する迅速承認制度を米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)が設けている。迅速承認制度に基づいて承認された新薬とそうでない新薬の治療上の価値との関連性を評価した。
2020.11.25
イタコン酸は肺線維症の重症度を制御する
Itaconate controls the severity of pulmonary fibrosis
特発性肺線維症(IPF)は死に至る肺の疾患であり、気道マクロファージ(AM)が深く関与している。イタコン酸はマクロファージからの炎症性サイトカインの分泌を抑制することが示されているが、線維症におけるその役割は明らかでない。本研究では、イタコン酸が肺における内因性抗線維化因子であることが示された。
2020.11.25
運動ニューロン疾患における脳の構造的・機能的コネクトーム 多施設共同MRI研究
Structural and functional brain connectome in motor neuron diseases A multicenter MRI study
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)、原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)、および進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)における構造的・機能的神経機構を調査する。イタリアの3施設で、孤発性ALS患者173例、PLS患者38例、PMA患者28例、および健康な対照者79例を組み入れた。
2020.11.25
腎移植患者に対する自己血の制御性T細胞投与の安全性と治療効果:第I/IIa相臨床試験
Regulatory T cells for minimising immune suppression in kidney transplantation: phase I/IIa clinical trial
腎移植患者に自己採血中の制御性T細胞(以下、nTregと略す)投与が免疫制御にどう影響するのか検討を行った。研究はドイツ・ベルリンにあるシャリテ大学病院の生体腎移植を受けた患者を対象に行った。対象者を投与群11人、対照群9人に分けて比較評価した。
2020.10.27
ヒトCLEC9A抗体はWilms腫瘍遺伝子1(WT1)抗原をCD141陽性樹状細胞に送達し、WT1特異的なナイーブおよびメモリーCD8陽性T細胞を活性化する
Human CLEC9A antibodies deliver Wilms' tumor 1 (WT1) antigen to CD141 + dendritic cells to activate naïve and memory WT1-specific CD8 + T cells
Wilms腫瘍遺伝子1(WT1)遺伝子産物(WT1抗原)に特異的なCD8陽性T細胞を誘導するがんワクチンが有望視されているが、その免疫原性及び臨床的奏効率は、WT1抗原をCD141陽性樹状細胞に送達することによって高まる可能性がある。Cタイプレクチン様受容体CLEC9Aは、CD141陽性樹状細胞のみに発現し、CD8陽性T細胞の反応を制御する。我々は、ヒト抗CLEC9A抗体をWT1抗原に融合させた新規がんワクチンを開発し、ヒトCD141陽性樹状細胞を標的とする能力と、WT1特異的なナイーブおよびメモリーCD8陽性T細胞を活性化する能力を評価した。
2020.10.27
パーキンソン病における無感情と衝動制御障害の併発
Co-occurrence of apathy and impulse control disorders in Parkinson’s disease
無感情と衝動制御障害(impulse control disorder:ICD)が独立に、動機付けスペクトラムの対極にあるものかどうかを実証的に検証する。単施設横断研究で、三次医療センターに通院する特発性パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)患者887例の人口統計学的データと臨床データを後ろ向きに収集した。
2020.10.27
デンマーク人女性における4価ヒトパピローマウイルスワクチン接種と自律神経障害を伴う特定の症候群との関連性:地域ベースのコホート内症例対照分析
Association between quadrivalent human papillomavirus vaccination and selected syndromes with autonomic dysfunction in Danish females: population based, self-controlled, case series analysis
ヒトパピローマウイルスに対する4価ヒトパピローマウイルスワクチン接種は、自律神経障害を伴う特定の症候群(ここでは慢性疲労症候群、複合性局所疼痛症候群、体位性起立性頻脈症候群の3つとしている。以下には自律神経障害症候群と称す)の発生との関連が疑われている。そこで、デンマークの国民を対象とした地域住民のコホートを使い、デンマーク生まれで、2007 - 2016年の10 - 44歳の女性137万5,737人を対象とし、その中で特定された自律神経障害症候群と判定された869例を症例として、コホート内における症例対照分析を行った。分析にあたって、症例群と対照群の年齢及び季節要因を補正した。
2020.10.06
脊髄小脳失調症(SCA)の1、2、3、6型遺伝子変異保有の症状発現時期とその進展に関する検討:RISCAコホートを使った追跡研究
Conversion of individuals at risk for spinocerebellar ataxia types 1, 2, 3, and 6 to manifest ataxia (RISCA): a longitudinal cohort study
脊髄小脳失調症(SCA)は常染色体優性遺伝性の神経変性疾患である。遺伝変異型SCA1、SCA2、SCA3、SCA6により運動失調の発現時期や進展の状況を検討した。対象者は、ヨーロッパ7カ国の14の拠点の専門医療施設の疾患情報を集約したRISCAコホートから選んだ。
2020.10.06
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーにおける2年間の炎症性病変の評価
Evaluation of inflammatory lesions over 2 years in facioscapulohumeral muscular dystrophy
顔面肩甲上腕筋ジストロフィー(facioscapulohumeral muscular dystrophy :FSHD)患者に対し2年間の経時的な検査を行って追跡し、炎症性病変が常に脂肪置換に先行するかどうか、筋肉の変性を伴わずに炎症が消失するかどうか、筋肉の炎症性病変ののちに常に脂肪交換が生じるかどうかを検討した。
2020.10.06
SARS-CoV-2に対する遺伝子組換えスパイクタンパク質ナノ粒子ワクチンの第I/II相試験
Phase 1-2 Trial of a SARS-CoV-2 Recombinant Spike Protein Nanoparticle Vaccine
新型コロナウイルスの表面はスパイクタンパクで覆われているため、このスパイクタンパクを標的としたワクチン開発が精力的に行われている。新型コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS)とよく似た構造をしていることからウイルス名はSARS-CoV-2と呼ばれている。今回紹介する論文ではワクチン開発では先頭集団を走っているNovavax社によって開発が進められているSARS-CoV-2の改変全長スパイクタンパクをワクチン製剤に用いた第I/II相試験の結果を報告している。