「難病Update」は、難病に関する最新情報を、ジャーナルを限定することなく、速報として現場の医療関係者の方に届けます。難病治療・研究に携わる医師・医療従事者の方々が対象です。内容は、基礎、疫学、臨床の分野別に、各編集委員の興味あるジャーナルから合計毎月3本程度選択をいただき、日本語に原稿を編集し、監修によるコメントも掲載します(任意)。掲載する項目は、日本語英語タイトル、著者、出典、日本語サマリー、原著リンク、キーワード、監修コメント、監修者名です。毎月1日を更新日とし、皆様に提供いたします。難病研究の支援になれば幸いです。
2024.12.25NEW
筋ジストロフィー患者および筋強直性ジストロフィー患者におけるがんリスク 登録に基づくコホート研究
Cancer Risk in Patients With Muscular Dystrophy and Myotonic Dystrophy A Register-Based Cohort Study
スウェーデンの全国登録のデータを用いて、筋ジストロフィー患者および筋強直性ジストロフィー患者のがん全体のリスクと、がんリスクの範囲を明らかにすることを目的とした。1950 - 2017年にスウェーデンで出生した筋ジストロフィーまたは筋強直性ジストロフィーの患者全例と、性、出生年、出生県でマッチさせた対照者(患者1例につき50例)を対象に、マッチングコホート研究を行った。
2024.12.25NEW
特発性脳内出血患者に対する手術後のアセチルサリチル酸の早期投与と晩期投与の安全性および有効性の比較(E-start試験):中国における多施設共同前向き非盲検エンドポイント盲検化無作為化試験
Safety and efficacy of early versus delayed acetylsalicylic acid after surgery for spontaneous intracerebral haemorrhage in China (E-start): a prospective, multicentre, open-label, blinded-endpoint, randomised trial
非外傷性脳内出血患者は術後に重大で有害な心血管、脳血管、および末梢血管イベントのリスクが高く、それが致死症となる場合がある。特発性脳内出血患者に対して術後の虚血イベントを予防することに抗血小板薬療法が効果的であるが、術後の最適投与時期が明らかにされていない。本研究は特発性脳内出血の手術後に、抗血小板薬であるアセチルサリチル酸を早期開始する場合と晩期開始する場合の安全性および有効性を比較するために行った。
2024.12.25NEW
母になることへの希望:同種造血幹細胞移植後の妊娠(全国多施設共同研究)
Hope for motherhood: pregnancy after allogeneic hematopoietic cell transplantation (a national multicenter study)
同種造血幹細胞移植(alloHCT)後の長期生存率の改善により、若年成人のがんサバイバーにとっての家族計画が重要なテーマとなっている。しかしながら、この治療に関連する不妊リスクは、alloHCT治療を受けた女性に難題をもたらす。本研究では、現代コホートにおける妊娠率および出生率を評価するため、2003 - 2018年にalloHCTを受けた18 - 40歳の成人女性を対象として、German Transplant Registryのデータを用いて全国多施設共同研究を実施した。
総監修 | 大阪大学 名誉教授 武田 裕 |
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監訳・コメント | 大阪大学大学院医学系研究科癌ワクチン療法学寄付講座 招へい教授 坪井昭博先生 元 大阪大学大学院医学系研究科癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生 関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生 国立病院機構大阪南医療センター 神経内科 狭間敬憲先生 |
主催 | 公益財団法人 大阪難病研究財団 |
編集・運営 | 株式会社アスカコーポレーション https://www.asca-co.com/ |
2022.03.29
抗好中球細胞質抗体関連血管炎(AAV)患者に対する血漿交換の治療効果の評価:最新のシステマティックレビューとメタアナリシス
The effects of plasma exchange in patients with ANCA- associated vasculitis: an updated systematic review and meta- analysis
抗好中球細胞質抗体関連血管炎(ANCA associated vasculitis、以下、AAV)に対する血漿交換の治療効果を無作為化比較試験による研究を集め、システマティックレビュー及びメタアナリシスにより評価した。研究の選択基準は、12か月以上の追跡期間で、対象疾患はAAV又は微量免疫型急速進行性糸球体腎炎である。研究論文は
2022.02.25
2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬の投与歴のある慢性骨髄性白血病患者におけるSTAMP阻害薬アシミニブとボスチニブを比較する第3相非盲検無作為化試験
A phase 3, open-label, randomized study of asciminib, a STAMP inhibitor, vs bosutinib in CML after 2 or more prior TKIs
2剤以上のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に抵抗性あるいは不耐容の慢性期の慢性骨髄性白血病(CML-CP)患者は、疾患の生物学的特性のために、そして、現治療の有効性および安全性が不十分であるために転帰不良となるリスクが高い。ABLミリストイルポケットを特異的標的(Specifically Targeting the ABL Myristoyl Pocket; STAMP)とする、画期的新薬であるBCR-ABL1阻害薬アシミニブは、既承認のTKIに対する抵抗性および不耐容の克服に結び付く可能性がある。この第3相非盲検試験では、2剤以上のTKIによる治療歴のあるCML-CP患者が、アシミニブ40 mgの1日2回投与群、または、ボスチニブ500 mgの1日1回投与群に、2:1の比率で無作為に割り付けられた。
2022.02.25
新生血管による加齢黄斑変性に対する16週間隔のファリシマブの硝子体内投与の有効性、持続性、安全性(TENAYA、LUCERNE):2つの無作為・二重盲検・非劣性・第3相治験結果
Efficacy, durability, and safety of intravitreal faricimab up to every 16 weeks for neovascular age-related macular degeneration (TENAYA and LUCERNE): two randomised, double-masked, phase 3, non-inferiority trials
世界271施設の50歳以上の未治療の新生血管を伴う「加齢黄斑変性」の患者に対するファリシマブ(faricimab)の16週間隔投与とアフリベルセプト(aflibercept)の8週間隔投与との比較有効性の第3相治験成績の評価を行った。「ファリシマブ6.0 mg」を最長16週間隔で投与する群と、「アフリベルセプト2.0 mg」を8週間隔で投与する群に層別し盲検法により1:1の割合で無作為に割り付けて、投与患者の20週、24週時点の疾患活動性を評価した。
2022.02.25
インターロイキン-6の阻害が血液脳関門障害を抑制して視神経脊髄炎スペクトラム障害の発症を予防することが新たな血液脳関門モデルで明らかに
New BBB Model Reveals That IL-6 Blockade Suppressed the BBB Disorder, Preventing Onset of NMOSD
視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorder:NMOSD)の病態生理ならびにインターロイキン-6阻害薬(サトラリズマブ)の治療メカニズムと濃度を、特に血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)の破綻という観点から、新たなin vitroおよびex vivoヒトBBBモデルならびにin vivoモデルを用いて評価する。
2022.01.27
中等度進行パーキンソン病に対するAADC遺伝子治療の安全性:PD-1101試験の3年転帰
Safety of AADC Gene Therapy for Moderately Advanced Parkinson Disease: Three-Year Outcomes From the PD-1101 Trial
中等度進行パーキンソン病(Parkinson disease:PD)で運動の日内変動がある参加者を対象としたNBIb-1817(VYAADC01)のPD-1101試験における最終的な36カ月間の安全性および臨床転帰を報告する。
2022.01.27
誘導性遺伝子発現系を用いずに分化能を維持したヒト赤血球不死化細胞株の樹立
Establishment of an immortalized human erythroid cell line sustaining differentiation potential without inducible gene expression system
増殖し続けることのできる不死化赤芽球細胞株から産生した赤血球(RBC)は、今後の輸血治療での利用が期待されている。不死化赤芽球細胞株は、ヒトパピローマウィルス(HPV)の持つE6/E7遺伝子の導入により樹立することができる。しかし、不死化細胞株の分化および成熟を誘導するには、遺伝子導入システムによるHPV-E6/E7の発現の停止が不可欠であると考えられてきた。本研究では、簡易なHPV-E6/E7の発現を用いてヒトの骨髄から樹立した赤芽球細胞株は、遺伝子発現を停止しなくても正常な赤血球へと分化することができた。
2022.01.27
人工膝関節全置換手術後の疼痛に対するデキサメタゾンの鎮痛補助薬としての効能評価:無作為化臨床試験
Effect of dexamethasone as an analgesic adjuvant to multimodal pain treatment after total knee arthroplasty: randomised clinical trial
人工膝関節全置換術は世界的に普及してきているが、術後の痛みに対してマルチモーダル鎮痛治療が使われている。デキサメタゾンは、これまで術後の吐気と補助鎮痛効果を期待して投与されてきたが、エビデンスがまだ乏しい。そのために術後患者にデキサメタゾンを使った臨床評価を行うためにデンマークの5病院で2018年9月から2020年3月に人工膝関節全置換術を受けた成人患者485例を対象に、無作為化試験により効果を評価した。
2021.12.24
ミトコンドリア症の診断における全ゲノム解析の有用性の検討:コホート研究
Use of whole genome sequencing to determine genetic basis of suspected mitochondrial disorders: cohort study
ミトコンドリア症の診断に全ゲノム解析を行うことが有用かどうかについて、イングランドの100,000ゲノムプロジェクトの2015 - 2018年間に登録されているミトコンドリア症として確定ないし疑いと診断されていた345例に対して、全ゲノム解析を行った。対象者にショートリード全ゲノムシーケンシングを実施して、選択された遺伝子のパネルの表現型、ClinVarによる病原性変異体について、Exomiserツールを使って分析し、上位10の核DNAの変異体の優先順位付けを行った。
2021.12.24
筋萎縮性側索硬化症の前頭側頭型認知症:臨床スペクトル全体における神経相関の共通点と相違点
Amyotrophic Lateral Sclerosis Frontotemporal Dementia: Shared and Divergent Neural Correlates Across the Clinical Spectrum
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と行動障害型前頭側頭型認知症(behavioral variant of frontotemporal dementia:bvFTD)には、臨床的、遺伝的、病理学的なレベルでかなりの重複が認められている。症状の連続体のなかで、ALSによって自然に生じるものか、表現型とみなすべきかの点は、明らかではない。本研究では、MRIのコネクトミクスデータの数理モデルを用いて、ALS-FTDスペクトル全体における神経相関を読み解いた。
2021.12.24
新規の『RMFペプチド-MHC複合体に特異的なT細胞二重特異性抗体』を用いた急性骨髄性白血病の細胞内WT1を標的とした治療
Targeting intracellular WT1 in AML with a novel RMF-peptide-MHC specific T-cell bispecific antibody
抗体を用いた免疫療法は、化学療法に対する耐性を示す白血病細胞に対する有望な治療法であるが、従来の抗体療法の標的は細胞の系統に特異的な細胞表面抗原に限られている。細胞内の抗原を標的とすることで、白血病に関連するその他の多くの標的が抗体療法の対象になり得ると考えられる。本研究では、CrossMabおよびknob-into-holesの技術を用いて作製された新規T細胞二重特異性(T-cell bispecific: TCB)抗体を評価した。