「難病Update」は、難病に関する最新情報を、ジャーナルを限定することなく、速報として現場の医療関係者の方に届けます。難病治療・研究に携わる医師・医療従事者の方々が対象です。内容は、基礎、疫学、臨床の分野別に、各編集委員の興味あるジャーナルから合計毎月3本程度選択をいただき、日本語に原稿を編集し、監修によるコメントも掲載します(任意)。掲載する項目は、日本語英語タイトル、著者、出典、日本語サマリー、原著リンク、キーワード、監修コメント、監修者名です。毎月1日を更新日とし、皆様に提供いたします。難病研究の支援になれば幸いです。
2025.05.28NEW
PHGDHによる転写制御がアルツハイマー病のアミロイド沈着を引き起こす
Transcriptional regulation by PHGDH drives amyloid pathology in Alzheimer’s disease
遺伝子転写の異常調節は従来、ADの特徴とはみなされてこなかったが、近年の研究により遅発性アルツハイマー病(Late-onset AD:LOAD)の患者で著明なエピゲノム変化が起きていることが明らかになっている。われわれは、LOADのバイオマーカーであるホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(phosphoglycerate dehydrogenase:PHGDH)の発現変化が、PHGDH自体の酵素活性とは無関係にマウスとヒトの脳オルガノイドにおけるADの病理を制御していることを明らかにした。
2025.05.28NEW
成人発症の孤発性脊髄小脳変性症の遺伝的背景:多施設共同縦断的SPORTAXコホートにおける発生患者377例の多面的遺伝学研究
The genetic landscape of sporadic adult-onset degenerative ataxia: a multi-modal genetic study of 377 consecutive patients from the longitudinal multi-centre SPORTAX cohort
成人発症孤発性脊髄変性症は、アルツハイマー病、筋委縮性側索(ALS)やパーキンソン病などと異なり、特定の単一遺伝子性負荷が大きい疾患と考えられている。本研究は信頼できる多施設共同コホートにおいて発症した孤発性脊髄小脳変性症の成人症例の多面的遺伝子スクリーニング検査により縦断的、系統的に遺伝的背景を検討したものである。
2025.05.28NEW
ARIC研究参加者における高齢期のボディ・マス・インデックスおよび中年期から高齢期にかけてのボディ・マス・インデックスの変化と認知症の新規発症との関連
Association of Body Mass Index in Late Life, and Change from Midlife to Late Life, With Incident Dementia in the ARIC Study Participants
中年期の肥満は認知症の危険因子であるが、高齢期の肥満には認知症リスクが低いこととの関連が示されている。本研究では、高齢期のボディ・マス・インデックス(BMI)のカテゴリーと認知症との関連を中年期から高齢期にかけてのBMIの変化を考慮する場合としない場合とで探索することにより、このパラドックスについて検討した。
総監修 | 大阪大学 名誉教授 武田 裕 |
---|---|
監訳・コメント | 大阪大学大学院医学系研究科癌ワクチン療法学寄付講座 招へい教授 坪井昭博先生 大阪大学大学院医学系研究科癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生 関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生 国立病院機構大阪南医療センター 神経内科 狭間敬憲先生 |
主催 | 公益財団法人 大阪難病研究財団 |
編集・運営 | 株式会社アスカコーポレーション https://www.asca-co.com/ |
2022.01.27
誘導性遺伝子発現系を用いずに分化能を維持したヒト赤血球不死化細胞株の樹立
Establishment of an immortalized human erythroid cell line sustaining differentiation potential without inducible gene expression system
増殖し続けることのできる不死化赤芽球細胞株から産生した赤血球(RBC)は、今後の輸血治療での利用が期待されている。不死化赤芽球細胞株は、ヒトパピローマウィルス(HPV)の持つE6/E7遺伝子の導入により樹立することができる。しかし、不死化細胞株の分化および成熟を誘導するには、遺伝子導入システムによるHPV-E6/E7の発現の停止が不可欠であると考えられてきた。本研究では、簡易なHPV-E6/E7の発現を用いてヒトの骨髄から樹立した赤芽球細胞株は、遺伝子発現を停止しなくても正常な赤血球へと分化することができた。
2022.01.27
人工膝関節全置換手術後の疼痛に対するデキサメタゾンの鎮痛補助薬としての効能評価:無作為化臨床試験
Effect of dexamethasone as an analgesic adjuvant to multimodal pain treatment after total knee arthroplasty: randomised clinical trial
人工膝関節全置換術は世界的に普及してきているが、術後の痛みに対してマルチモーダル鎮痛治療が使われている。デキサメタゾンは、これまで術後の吐気と補助鎮痛効果を期待して投与されてきたが、エビデンスがまだ乏しい。そのために術後患者にデキサメタゾンを使った臨床評価を行うためにデンマークの5病院で2018年9月から2020年3月に人工膝関節全置換術を受けた成人患者485例を対象に、無作為化試験により効果を評価した。
2021.12.24
ミトコンドリア症の診断における全ゲノム解析の有用性の検討:コホート研究
Use of whole genome sequencing to determine genetic basis of suspected mitochondrial disorders: cohort study
ミトコンドリア症の診断に全ゲノム解析を行うことが有用かどうかについて、イングランドの100,000ゲノムプロジェクトの2015 - 2018年間に登録されているミトコンドリア症として確定ないし疑いと診断されていた345例に対して、全ゲノム解析を行った。対象者にショートリード全ゲノムシーケンシングを実施して、選択された遺伝子のパネルの表現型、ClinVarによる病原性変異体について、Exomiserツールを使って分析し、上位10の核DNAの変異体の優先順位付けを行った。
2021.12.24
筋萎縮性側索硬化症の前頭側頭型認知症:臨床スペクトル全体における神経相関の共通点と相違点
Amyotrophic Lateral Sclerosis Frontotemporal Dementia: Shared and Divergent Neural Correlates Across the Clinical Spectrum
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と行動障害型前頭側頭型認知症(behavioral variant of frontotemporal dementia:bvFTD)には、臨床的、遺伝的、病理学的なレベルでかなりの重複が認められている。症状の連続体のなかで、ALSによって自然に生じるものか、表現型とみなすべきかの点は、明らかではない。本研究では、MRIのコネクトミクスデータの数理モデルを用いて、ALS-FTDスペクトル全体における神経相関を読み解いた。
2021.12.24
新規の『RMFペプチド-MHC複合体に特異的なT細胞二重特異性抗体』を用いた急性骨髄性白血病の細胞内WT1を標的とした治療
Targeting intracellular WT1 in AML with a novel RMF-peptide-MHC specific T-cell bispecific antibody
抗体を用いた免疫療法は、化学療法に対する耐性を示す白血病細胞に対する有望な治療法であるが、従来の抗体療法の標的は細胞の系統に特異的な細胞表面抗原に限られている。細胞内の抗原を標的とすることで、白血病に関連するその他の多くの標的が抗体療法の対象になり得ると考えられる。本研究では、CrossMabおよびknob-into-holesの技術を用いて作製された新規T細胞二重特異性(T-cell bispecific: TCB)抗体を評価した。
2021.11.26
抗IgLON5抗体関連疾患:新たな球発症型運動ニューロン類縁症候群
Anti-IgLON5 Disease: A New Bulbar-Onset Motor Neuron Mimic Syndrome
抗IgLON5血清陽性で球麻痺型運動ニューロン疾患様の表現型を呈する5例を新たに加えることにより、抗IgLON5抗体関連疾患のスペクトルを拡大する。この5例の患者の臨床経過、脳MRIと検査の所見、および治療に対する反応の特徴を明らかにした。
2021.11.26
赤血球に発現するTLR9にDNAが結合すると、自然免疫の活性化と貧血が促進される
DNA binding to TLR9 expressed by red blood cells promotes innate immune activation and anemia
赤血球は血流を介して組織へ酸素を運搬することで細胞の好気呼吸に不可欠な役割をはたしている。これまで赤血球は免疫学的には不活性と考えられており、二次的な機能はほとんど確認されていない。本研究により、赤血球は核酸を感知するToll様受容体9(TLR9)を細胞表面に発現することにより重要な免疫センサーとして機能することが示された。
2021.11.26
EAS Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration(FHSC)に登録されている家族性高コレステロール血症の診断と治療の現状に基づく今後の世界的な展望
Global perspective of familial hypercholesterolaemia: a cross-sectional study from the EAS Familial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration (FHSC)
欧州アテローム性動脈硬化症協会によるFamilial Hypercholesterolaemia Studies Collaboration (FHSC)の登録者のデーターを使い、「ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症」の成人の診断と管理の現状について分析を行った。分析対象は、FHSCにおいて、臨床または遺伝子により診断されたヘテロ接合性家族性高コレステロール血症である可能性が高い、または確定された成人(18歳以上)の症例である。
2021.10.26
高齢のパーキンソン病患者におけるpimavanserinの使用に伴う入院および死亡のリスク
Risk of Hospitalization and Death Associated With Pimavanserin Use in Older Adults With Parkinson Disease
Pimavanserinの使用に伴う入院および死亡のリスクを明らかにする。2015年11月1日 - 2018年12月31日に、65歳以上のパーキンソン病の成人を対象とした長期療養施設の入所者に関する行政データおよび請求データを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。
2021.10.26
慢性非がん性疼痛及びがん性疼痛に対する医療用大麻またはカンナビノイド:無作為化臨床試験のシステマティックレビューとメタアナリシス
Medical cannabis or cannabinoids for chronic non-cancer and cancer related pain: a systematic review and meta-analysis of randomised clinical trials
医療用大麻及びカンナビノイドが慢性疼痛に対して有効かどうかについての評価が定まっていない。そのために、MEDLINE、EMBASE、AMED、PsycInfo、CENTRAL、CINAHL、PubMed、Web of Science、Cannabis-Med、Epistemonikosの論文データーベース中の2021年1月までの臨床試験のシステマティックレビューとメタアナリシスを行った。対象は、追跡期間1か月以上の無作為化した臨床試験のものとした。