「難病Update」は、難病に関する最新情報を、ジャーナルを限定することなく、速報として現場の医療関係者の方に届けます。難病治療・研究に携わる医師・医療従事者の方々が対象です。内容は、基礎、疫学、臨床の分野別に、各編集委員の興味あるジャーナルから合計毎月3本程度選択をいただき、日本語に原稿を編集し、監修によるコメントも掲載します(任意)。掲載する項目は、日本語英語タイトル、著者、出典、日本語サマリー、原著リンク、キーワード、監修コメント、監修者名です。毎月1日を更新日とし、皆様に提供いたします。難病研究の支援になれば幸いです。
2025.01.30NEW
認知障害、疲労、気分障害を有する多発性硬化症患者における萎縮のパターン
Atrophy Patterns in Patients With Multiple Sclerosis With Cognitive Impairment, Fatigue, and Mood Disorders
多発性硬化症(MS)によくみられる認知障害、疲労、不安、うつと萎縮のパターンを特定することを目的とした。McDonald基準2017を満たす再発寛解型MS患者と、同じような年齢、性別、学歴の健康な対照者(HC)を組み入れた横断的コホート研究を実施した。
2025.01.30NEW
2019年の0 - 14歳の小児の結核性髄膜炎の世界的負担の推計
Global burden of tuberculous meningitis in children aged 0 - 14 years in 2019: a mathematical modelling study
結核性髄膜炎は、治療しなければ致死率が高く、生存したとして神経学的後遺症を残す可能性が高い疾患であるが、小児の罹患者が世界に何人いるのかのデータはない。そこで、2019年時点の小児の結核性髄膜炎の世界の疾患負担および同疾患の死亡率を、WHOの地域別、年齢群別、治療状態、およびHIV感染状況別に、文献データのメタアナリシスによる数値をもとにベイズ数学モデルを用いて推定した。
2025.01.30NEW
ヒトにおける複数のワクチンに対する抗体反応持続の予測因子および機序についてのシステムワクチン学解析
System vaccinology analysis of predictors and mechanisms of antibody response durability to multiple vaccines in humans
本研究では、抗体反応の大きさと持続性に影響を及ぼす因子を同定する目的でシステムワクチン学的解析を行い、AS03アジュバントがある場合とない場合とでヒトにおけるH5N1型インフルエンザワクチンに対する免疫反応について検討した。
総監修 | 大阪大学 名誉教授 武田 裕 |
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監訳・コメント | 大阪大学大学院医学系研究科癌ワクチン療法学寄付講座 招へい教授 坪井昭博先生 元 大阪大学大学院医学系研究科癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授 岡芳弘先生 関西大学大学院社会安全学研究科公衆衛生学 特別契約教授 高鳥毛敏雄先生 国立病院機構大阪南医療センター 神経内科 狭間敬憲先生 |
主催 | 公益財団法人 大阪難病研究財団 |
編集・運営 | 株式会社アスカコーポレーション https://www.asca-co.com/ |
2023.05.29
環境中の大気汚染物質濃度と臨床診断認知症との関連評価の研究-システマティックレビューとメタアナリシス-
Ambient air pollution and clinical dementia: systematic review and meta-analysis
世界の大きな健康・疾病課題として認知症がある。認知症と大気汚染物質との関連についてシステマティックレビューとメタアナリシスを行った。対象とする研究論文はEMBASE、PubMed、Web of Science、Psycinfo、OVID Medlineの2022年7月までのものとした。
2023.05.29
CSF中PDGFRβと加齢、血液脳関門損傷、神経炎症、およびアルツハイマー病の病理学的変化との関連
Associations of CSF PDGFRβ With Aging, Blood-Brain Barrier Damage, Neuroinflammation, and Alzheimer Disease Pathologic Changes
神経血管単位を構成するペリサイトは、血液脳関門(BBB)損傷を受けると脳脊髄液(CSF)中に血小板由来成長因子β(PDGFRβ)を放出する。CSF中のPDGFRβが、アルツハイマー病(AD)や加齢に伴う、認知症にいたるさまざまな病理学的変化と関連するかどうかを検証することを目的とした。
2023.04.26
乾癬の生物学的免疫製剤治療と炎症性関節炎の発症期間との関係の検討:後ろ向きコホート研究による評価
Association between biological immunotherapy for psoriasis and time to incident inflammatory arthritis: a retrospective cohort study
乾癬患者の皮膚疾患の治療に標的生物学的免疫製剤が有効であることが示されているが、その製剤が炎症性関節炎の進行を遅らせるのかどうかは確認できていない。米国の全国患者のデータベースのTriNetXネットワークの電子カルテの情報を使い、その中の乾癬患者について後ろ向きコホート研究手法により炎症性関節炎発症までの期間を分析した。
2023.04.26
封入体筋炎患者の臨床サブグループおよび進行に関連する要因
Clinical Subgroups and Factors Associated With Progression in Patients With Inclusion Body Myositis
孤発性の封入体筋炎(IBM)は、多くの治療法が検討されているものの、概して効果に乏しく、臨床的多様性が治療への反応に影響すると考えられる。この研究の目的は、大規模なIBMコホートにおける臨床的に異なるサブグループの特定、および疾患進行の予後規定因子の特定である。
2023.04.26
AML患者に対する治療用細胞ワクチンによる自然免疫および獲得免疫の再活性化
Reinvigoration of innate and adaptive immunity via therapeutic cellular vaccine for patients with AML
がんに対する治療法として、自然免疫および獲得免疫の活性化を統合する戦略が望まれている。我々は、新規プラットフォームとして、ウィルムス腫瘍抗原1(Wilms’ tumor antigen 1, WT1)発現人工アジュバントベクター細胞(aAVC-WT1)を確立した。それは、インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞を介した樹状細胞の活性化をT細胞性免疫に結び付けるものである。今回、再発性/難治性急性骨髄球性白血病の患者9例を対象に、このaAVC-WT1を初めてヒトに投与した試験(first-in-human試験)について報告する。
2023.03.28
COVID-19罹患全身性自己免疫性リウマチ性疾患の患者に対するSARS-CoV-2外来治療の有無による転帰の比較:後ろ向きコホート研究
Outcomes with and without outpatient SARS-CoV-2 treatment for patients with COVID-19 and systemic autoimmune rheumatic diseases: a retrospective cohort study
全身性自己免疫性リウマチ性疾患の患者は免疫抑制状態にあり、COVID-19による重症化リスクを有している。これらの患者がCOVID-19に罹患した場合、SARS-CoV-2の外来治療の有無により転帰はどう異なるのか明らかにされていない。そこで、Massachusetts General Brigham Integrated Health Care System(米国、ボストン)の登録者のコホートを使い後ろ向きに、経時的に転帰とCOVID-19のリバウンドの状況を評価した。
2023.03.28
リンパ管を介したT細胞の流出は抗原との遭遇により調節され、腫瘍制御を制限する
T cell egress via lymphatic vessels is tuned by antigen encounter and limits tumor control
免疫療法が効果を発揮するためには腫瘍内に抗原特異的CD8陽性T細胞が蓄積することが必要であるが、抗原特異的CD8陽性T細胞の腫瘍からリンパ管への流出のメカニズムはいまだ十分に理解されていない。本研究では、腫瘍近傍リンパ管がケモカインであるCXCL12を介してCD8陽性T細胞の流出を調節していること、また腫瘍抗原との遭遇が腫瘍抗原特異的CD8陽性T細胞のCXCR4(CXCL12のレセプター)の発現を調整していることを明らかにした。
2023.03.28
多発性硬化症に関連する直接的な医療費:カナダBritish Columbia州の住民を対象としたコホート研究(2001 – 20年)
Direct Health Care Costs Associated With Multiple Sclerosis: A Population-Based Cohort Study in British Columbia, Canada, 2001–2020
この研究の目的は、カナダBritish Columbia州における多発性硬化症(MS)の超過医療費を定量化することである。2001 - 20年の住民の行政保健医療データを用いて、MS患者を対象とした後ろ向きマッチングコホート研究を行い、直接的な医療費(外来サービスの利用、入院、調剤された薬剤)を個人別に算出した。identity linkと正規分布をもつ一般化線形モデルを用いて、MSの超過費用をMS患者と対照者の費用の平均差として推定した。
2023.02.27
MOG抗体関連疾患、多発性硬化症、およびAQP4-IgG陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害における腫瘤性脱髄
Tumefactive Demyelination in MOG Ab–Associated Disease, Multiple Sclerosis, and AQP-4-IgG–Positive Neuromyelitis Optica Spectrum Disorder
ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白IgG関連疾患(MOGAD)における腫瘤性脳病変について、頻度、臨床、検査、およびMRIの特徴を明らかにし、多発性硬化症(MS)およびアクアポリン4-IgG陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害(AQP4+NMOSD)の場合と比較することを試みた。
2023.02.27
イングランドにおける男性と性交渉をもつゲイ、バイセクシャルおよびその他の男性間の性行為感染に関連する広範囲薬剤耐性・多剤耐性フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)血清型2aの出現:記述疫学研究
Emergence of extensively drug-resistant and multidrug-resistant Shigella flexneri serotype 2a associated with sexual transmission among gay, bisexual, and other men who have sex with men, in England: a descriptive epidemiological study
細菌性赤痢(Shigellosis)は糞口接触により伝播し、海外旅行に関連した感染症であった。しかしイングランドでは近年、ゲイ、バイセクシャルおよびその他の男性間の性行為による感染症(Shigella flexneri及びShigella sonnei)となっている。2021年9月に、プラスミドに「blaCTX-M-27」を保有する広範囲薬剤耐性(XDR)ソンネ赤痢菌が出現し、拡大スペクトラム型β-ラクタマーゼ産生遺伝子を保有する赤痢菌が拡散する懸念が強まっている。そこで、英国健康安全保障庁胃腸系細菌部門(GBRU)が保有する